それが、200億円に及ぶ「政党復活予算」の廃止だ。「これはいわば、都議会議員らが自由裁量で使える金。議員にとっては、補助金などの予算を復活させることで、関連する業界団体に恩を売る道具ですね。癒着構造の象徴であると同時に、議員にとって生命線でもあるわけです」(前同)
その“兵糧”を奪われたら一大事。「もはや、一刻の猶予もならなかったんでしょう。最大抵抗勢力である都議会自民党が、7日の代表質問で知事に牙を剥いたんです」(前出の都庁担当記者) 自民党は、知事の“揚げ足取り”戦術に打って出た。
「小池知事は就任時、都議会に“(フェアな政治のために)馴れ合いや根回しをなくしましょう”と訴えていました。それを逆手に取り、彼らは通常、事前に通告するはずの質問内容を知らせず、“抜き打ち”で斬りかかったんです。あげく、質問した崎山議員の質問は細かく28問にも及びました。知事は必死にメモを取りながら、しどろもどろに答弁せざるをえなかったというわけです」(前同)
そして、冒頭のシーン。ヤジが飛び交い、都議会はさながら“乱軍の戦場”となった。だが、自民党の戦術は見事に失敗する。メディアがソッポを向いたのだ。『ワイドナショー』(フジテレビ系)では、ダウンタウンの松本人志に「へそくりを没収されてヒステリーを起こしているという感じ」と皮肉られ、スピードワゴンの小沢一敬からは「だから“政治家だせえ”と思っちゃう」と呆れられるなど、完全に逆効果。痛手を被った格好だ。
さらに失策は続く。自民党東京都連の下村博文会長は、7日の代表質問の前日、都知事選で党の方針に反して小池知事を支援した豊島、練馬の区議7人を、最も重い除名処分にした。「都議会自民党の攻勢を支援するため、代表質問の前日というタイミングで発表したんでしょうが、これまた、不発に終わりました」(都庁担当記者)
知事はすかさず、主宰する政治塾「希望の塾」の会合を開き、熱気に包まれる4000人の参加者を前に、「かなり多くの方が立候補したいという意欲に燃えて具体的な目標を持っている。後押しをしたい」と述べ、塾の参加者の中から、来夏に予定される都議会選挙の候補者を擁立する考えを明らかにした。
「除名された区議“七人衆”のうち、2名は都議選に出馬すると聞いています。もともと、小池知事は政治塾を地域政党として立ち上げ、既成政党を牽制するカードに使おうとしていました。そのカードを切るタイミングが予定より早まったわけですが、小池知事にとっては、むしろプラス。改めて都民に、新しい政治に臨む姿勢を示すことができるからです」(鈴木氏)