実は、閲覧を増やすためには、記事の内容の充実より、ヒットしやすいキーワードが入った記事を多く掲載するほうが手っ取り早い。こうした手法を「SEO」(検索エンジン最適化)というが、そのため、ウェルクはヒットしやすいキーワードを複数入れ込み、かつ1日約100本もの記事を載せていたのだ。そして、その大量の記事を書くライターを、ネット上で“2000字1000円”の安値で探していた。

「これにはマニュアルがあり、DeNAが組織的に行っていた。そんな安い原稿料ですからプロとは言えない“にわかライター”がほとんどで、子育て中の主婦が内職していたケースも少なくないです。むろん、医療知識はド素人。ところが、内容を医療のプロがチェックする体制もない。これでは、トンデモ記事が出るのも無理はない」(前同)

「吉野家の牛丼でアレルギーのリスク」「牛乳などに含まれるラクトフェリンという成分が放射能を防ぐ」などの無責任な記事もあったという。冒頭で登場してもらった桑満院長に、具体的に、そのデタラメぶりを解説してもらった。

「適当に1つの記事を選んで読んだところ、結核に関するものだったんですが、正確には結核患者は年間2万人ほど発生しているんですが、それが4万人に。ところが、記事後半では2万人になっている。また、“粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)”の医学用語が“俗流血管”に化けていました。そうかと思えば、結核菌が“空中にふわふわと浮いている”という医学上、ありえない表現もありましたね」

 1つの記事の前半と後半で重要な数字が違ったり、文章の流れがちぐはぐになるのは、同じテーマの複数の記事をあちこちからつまみ食い(コピー&ペースト)した可能性が高いという。「別の胃がんの記事では、患者数と死亡率(5年生存率)を混同し、胃がんの死亡率は肺がんに次いで2番目なんて書いていました。プロ医療関係者から見れば、信頼度ゼロです」(前同)

 中でも桑満院長が絶句したというのが、「肩こりがひどいのは幽霊が原因?」と言わんばかりの記事。紹介すると、<“肩が重い”と訴える方を霊視すると、幽霊が後ろから覆いかぶさって腕を前に垂らしている、つまり幽霊をおんぶしているように見えるそうですよ。肩の痛みや肩こりは、たとえば動物霊などがエネルギーを搾取するために憑いた場合など、霊的トラブルを抱えた方などに起こりやすいようです>(同記事より)

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