だが、私たち一般人がインチキ医療情報に接する機会は何もネットに限らない。特に高齢者の場合、インターネット自体やらない人も少なくない。が、それでもインチキ医療情報、健康法に踊らされる人は後を絶たないのだ。

 10年前から『NATROMの日記』というブログで、ネット上に溢れる“根拠のない医療情報”や“ニセ医学”に警鐘を鳴らし(アクセス数は延べ1000万以上)、書籍『「ニセ医学」に騙されないために危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!』(メタモル出版)を上梓している内科医のNATROM氏(匿名)がいう。

「“ニセ医学”に触れるのには大きく2つあり、一つは家族や親しい知人などからの口コミ。もう一つはテレビや雑誌などのマスコミからでしょう。口コミの場合、善意からのことでしょうが、多くの方は医療情報のプロではありません。また、マスコミの場合は注目を浴びやすくするために誇張したりする場合もあれば、広告との絡みもあります」

 NATROM氏の著書には、実に多くの具体的ケースが紹介されている。ステロイドは本当に悪魔のクスリか、がんは治療しないほうがいいのか、ワクチンは有害か、といった「現代医療編」。気功でがんは治るか、クリニックで幹細胞療法は可能か、といった「代替医療(民間医療)編」。

 さらにミネラル水、米のとぎ汁乳酸菌、酵素、各種健康食品、健康グッズなどの「健康法編」の3部構成なのだが、中でも2つ目の代替医療の場合、信じ込んでしまうと、既存の医療を拒否し、結果、死期を早めてしまう場合もあるから、問題は実に深刻だ。

 その一つに、放射線ホルミシス効果がある。大量の放射線被曝が有害であることに議論の余地はないが、少量なら有益ということで、自然放射線の10倍から100倍のラドンガスを発生させる装置を部屋に設置、あるいは同鉱石を床に敷き詰め、がんをはじめとする難病の治療をうたうクリニックがある。

「病気を抱え、大きな不安を抱えている場合、普通の医師は、がんは“治る”とは容易に言いませんが、そういうところは、えてして“治る”と簡単に断定します。だから、藁にもすがる思いで信じてしまうケースもあるんです」(NATROM氏)

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