また、酒を飲みすぎると下痢をするという読者も多いのではないだろうか。「日常的に大酒を飲むだけでも、大腸の蠕動運動(ぜんどううんどう:臓器を収縮させる動き)が過剰に促されて下痢を起こしますが、それ以外にも腸内細菌のバランスが崩れてしまうために、慢性的に下痢を起こしやすくなります」

 大酒は、腸内に生息する細菌や微生物の生態系、つまり、今話題の“腸内フローラ”をも壊してしまうらしい。だが、下痢の原因は、一概に胃腸の問題だけではないというのだ。

「腹痛や下痢が起きると、一般の人は“胃か腸が悪くなったのだろう”と思うのですが、実は膵臓も絡んでいることがあります。膵臓の機能が低下すると下痢を起こしやすくなります。みぞおちや背中がシクシク痛む場合は、飲酒によって膵臓に炎症を起こしている可能性もあります。忘年会で脂っこいものを食べたりすると、膵臓での脂肪の分解が追いつかなくなるのです」

 ここで、消化の仕組みを再確認してみよう。食べた物は、まず<食道>を通過し、<胃>では胃酸で蛋白質などが分解され、次に<十二指腸>で<膵臓>や<肝臓>から分泌される膵液や胆汁によって蛋白質や脂肪が分解される。そして<小腸>で、さらに蛋白質やアルコールなどを吸収し、それらは<肝臓>で分解されたり、エネルギーに変換されたりする。そして最後に、<大腸>を通過しながら水分が吸収される。

 つまり、消化器官は、すべてつながっていて、常に関わり合って働いているということだ。お腹の痛みというシグナルは、決して胃腸だけのものではないのだ。では、どうしても暴飲暴食が増えてしまうこの季節に、これらの病気を避けるべく内臓をいたわるには、どうしたらいいのか。

 耳の痛い話ではあるが、最も重要なのは“お酒はほどほどに”ということだと、大久保氏は言う。「お酒が強い人と弱い人がいるのは、持って生まれた体質によりますが、日本人の約半数は、摂取したアルコールを分解するアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)をまったく持っていないか、持っていても、その働きが弱い人です」

 飲むとすぐに顔が赤くなるタイプの人は飲めない人であり、そういう人は飲酒による食道がんや咽喉頭がんの発がんリスクも高い。「“酒は百薬の長”といわれますが、日本人の適量とは日本酒なら1日1合、焼酎なら0.6合、ビールなら中瓶1本、ウイスキーならダブル1杯までです」

 しかし、飲める人が飲みに行ったら、その量を守るのは、まず無理だろう。「だから、少なくとも週に2日は飲まない日を設けるほうが現実的なのです。“休肝日”というのは、文字通り肝臓を休めるのですが、実は肝臓だけのためではないのです」

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