今回のルールはまだ明らかになっていないが、前回のWBCでは、先発投手の球数は1次ラウンドが65球、2次ラウンドが80球、準決勝以降が95球と制限されていた。つまり先発投手は、4~5回くらいまでしか投げられない。中継ぎでありながら先発並みのイニング数を任される第2先発、8回を任されるセットアッパー、9回のクローザーと、継投が物を言うのだ。

 現役時代、中継ぎのエースとして活躍した野球評論家の橋本清氏が言う。「救援投手は出番がいつになるか分からないので、準備するのが難しいんです。特に第2先発は、イニング数も多いうえに、回の頭から投げる場合もあれば、ランナーを背負った場面で登板することもある。先発、リリーフ両方の資質が必要なんです」

 そのための人選が、増井浩俊、牧田和久という、両方の経験が豊富な投手である。彼らが第2先発を任されるのは間違いないだろう。またリリーフ陣は、先発とは違ったタイプの投手を選んで敵を惑わせるという役割もある。「今回の投手陣のキーマンは、秋吉亮、宮西尚生、牧田の3人。それぞれ、かなり個性的な投法で投げるので面白い存在です」(前同)

 サブマリン投法の牧田に、右の秋吉と左の宮西は変則のサイドスロー。いずれも海外にはいないタイプで、大物メジャーリーガーたちも苦戦必至だ。侍JAPANに先発完投型のエースばかりを揃えても意味がない。決して派手とは言えない彼らが名前を連ねたのは、WBCで勝つためには当然の秘策なのだ。

 一方の打線はどうか。メンバーを見ると、パの首位打者こそいないものの、セの首位打者・坂本勇人、セの本塁打&打点王・筒香嘉智、パの打点王・中田翔、さらにはトリプルスリーの山田哲人と、錚々たる強打者が名を連ねている。

「小久保監督は、彼ら強打者で“超重量級”の上位打線を組むのではないか。以前から“中田を軸にした打線”を公言しており、先の会見では、2番・青木を明言しましたから、坂本を1番に置き、青木でチャンスを広げ、山田、中田、筒香のクリーンアップで一気に畳み掛けることを想定しているのではないか」(ベテラン野球記者)

 北中米諸国の強力打線に打ち勝つには、そうしたくなるのも無理はないが、それでは前出の里崎氏が言ったような、コツコツと打線をつないで得点をもぎ取る日本野球は実現しない。

  1. 1
  2. 2
  3. 3