国際大会はひとつのミスが致命傷となる。重要なのは“転ばぬ先の杖”である。第4回WBC開幕まで、あと3週間と迫った今、前回の轍を踏まないためにも入念な準備が求められる。

 3連覇を目指した前回、日本は準決勝でプエルトリコに敗れた。大きな敗因にあげられたのが、3点を追う8回裏の拙攻だ。おさらいしておこう。1死から井端弘和(現巨人コーチ)のタイムリーで1対3。内川聖一(福岡ソフトバンク)もヒットで続き一、二塁。打席には4番・阿部慎之助(巨人)。同点から逆転へと期待が膨らんだ。

 ここで日本は仕掛けた。カウント0-1からの2球目、一塁走者の内川が猛然とスタートを切った。だが、二塁ベース付近には井端がいた。スタートを切りかけてやめたのだ。行き場を失った内川は、あえなくタッチアウト。反撃の気運は一気にしぼんでしまった。悪いのは井端か内川か。喧喧諤諤の議論が起きた。

 内川のミスを指摘したのは西武監督時代の02年、当時新人監督最多の90勝で優勝を果たした伊原春樹。名サードベースコーチとしても知られる。「仮にダブルスチールのサインが出ていたとしても、一塁ランナーは二塁ランナーの動きをじっと見ておかなくてはならない。コーチも“絶対に飛び出すなよ”と念を押しておくべきでした」

 一方、このときの一塁ベースコーチ緒方耕一は内川に同情的だった。「内川は責められません。もし僕がランナーでも全力で二塁に行っていたと思います」

 聞けば、ダブルスチールの練習は合宿でもほとんどやっていなかったという。いわば、ぶっつけ本番だったのだ。戦犯の一人とされた井端は「もし重盗をさせるのなら、足の速くない僕を代えておくべきだった」とも語った。

 指揮官は常に最悪の状況を覚悟しておかなければならない。その中で、いかにして最善のカードを切るか。小久保裕紀監督には腹の据わった采配が求められる。

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