また先発陣も、WBCならではのローテーションだと言えそうだ。「強振してくる海外の選手には、緩急や縦の変化が効きます。菅野のチェンジアップや、則本のフォーク、石川のスローカーブやシンカー、武田の縦に大きく落ちるカーブは、メジャーの強打者たちも相当、戸惑うでしょう」(前出のベテラン記者)

 4人とも昨シーズンは防御率2点台で、3桁の三振を奪っている。この安定感は、まさに先発向きだ。先発、リリーフの13人総動員で大谷の穴を埋めようとするのは、まさに日本のよさを引き出す奥義なのだが、それだけでは、大谷の穴は埋まらないかもしれない。

 大谷不在の侍JAPANが激戦を勝ち抜くためには、野手の力も必要になるだろう。失点を許さない鉄壁の守備に加えて、攻撃面では足を絡めて一点をもぎ取るような緻密な野球が、これまで以上に求められるはず。

「日本が準決勝以上に勝ち進んだ場合、会場となるのは、ロサンゼルスのドジャースタジアムとなります。この球場は、メジャーでも有数のホームランが出にくい投手有利の球場です。ここでは、ホームランなど、まったく必要ありません。ヒットをつなぐ野球が不可欠です」(前出の福島氏)

 必要なのは、ヒット性の当たりもアウトにする守備力と、短打を量産するミート力、そして機動力。さらには、チャンスをつなぐために犠打もうまくなくてはいけない。そのすべてをこなせる選手を探すのは難しいが、侍JAPANには存在する。それが菊池涼介(広島)だ。

 「小久保監督は、菊池を内野のユーティリティプレーヤーと位置づけて、基本的にはバックアップ要員と考えているようですが、本当は彼こそが、今の窮地を救うキーマンだと思います」(ベテラン記者)

 菊池は昨年、最多安打と犠打の両方で、リーグ1位を達成し、広島の優勝に大きく貢献した。さらには守備範囲の広さも、プロ野球界で随一。2番とセカンドが、これほど似合う選手はいないのだ。

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