これは、ストレスに対する体内の生理作用でも説明できる。がん細胞は1日に数千個できるといわれているのだが、ストレスがなく健康な人の場合、これをキラー細胞などの免疫細胞で排除することができる。ところが、ストレスが強くなると、この免疫細胞の働きが弱まるのだ。

 さらに、ストレスが強くなると、副腎皮質ホルモンが過剰に分泌され、これが免疫力の低下につながることも指摘されている。「ストレスや逆境は人を成長させ、乗り越えることで新たな世界や楽しさが開けます。その意味では人生のスパイス的存在なんですが、内に溜め込むと病気を呼び込んでしまいます。キツい、つらいといった感情を溜め込まず、うまく発散する方法を見つけることが大切です」(前出の下村医師)

 さて、心筋梗塞や脳卒中などは動脈硬化が大きな原因で、死亡率も高く、場合によっては“突然死”を招くこともある。意外にも、こうした血管病もその人の性格が大きく関係している。

「アメリカの心臓外科医のメイヤー・フリードマンは、カリフォルニア州で働く39~59歳の男性3154人を対象に、心筋梗塞や狭心症の発症と性格の関係について、8年半にわたって追跡調査を行いました。その結果、人よりアクティブ(活動的)でアラート(敏捷)、アグレッシブ(攻撃的)でアンビシャス(野心的)な“タイプA”の人は、そうでない“タイプB”に比べ、心筋梗塞発症率が2・12倍、狭心症は2・45倍も高いことが判明したのです」(前出の健康雑誌記者)

 タイプAの行動パターンは、
 ●目標に向かって効率的に進む
 ●仕事だけでなく遊びも活発で、いつも時間に追われて動いている
 ●闘争心、競争心が人より強く、上昇志向も強い
 などだが、いわゆる“頑張り屋”のため、管理職に上がるケースも多い。こんな人が上司になると、「もっと頑張れ!」と部下にハッパをかける。

 この傾向がさらに強くなると、マイペースな部下にイライラして、攻撃的になることもある。実際、タイプAには、悪口をよく言う人が多いことが知られている。ちなみに、フリードマンの分類によると、頑張り屋のタイプAと、のんびり屋のタイプBは、ほぼ半々の比率になるという。タイプAの上司に悩まされているタイプBの人は「オレより心筋梗塞になる確率が2倍以上高い」と思えば、少しは気が楽になるかも?

 なお、タイプAは心筋梗塞に加え、脳卒中などの血管病の発症率も高くなる。これはせっかちな人柄が血圧を高くして、動脈硬化を悪化させることも大きいようだ。

「性格はそう簡単に変えることはできませんが、自分の性格が、どんな病気を引き起こしやすいかを知って健診結果などに注意することは大切です」(下村医師)

 自分の性格を冷静に見つめ直すことが、認知症を防ぎ、がんと血管病という二大疾患から身を守る方法と言えそうだ。

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