阪神、中山に舞台を移して春競馬が開幕するが、競馬社会にとっては別れの季節でもある。ジョッキー界からは武幸、田中博の両名が今週を最後に調教師に転身する。

 引退騎手のラスト週で思い出すのは2006年の松永幹夫だ。最終日のメイン、阪急杯を11番人気(15頭立て)のブルーショットガンで制し、最終レースもフィールドルージュでV。この勝利が区切りの1400勝目。まさしく有終の美を飾る日になった。

 こうした事例はイメージほど多くはないのだが、ラスト週の武幸には期待感がある。というのも1997年の3月2日。騎手としてデビューした週に破天荒な勝利を挙げた“実績”があるからだ。なんとその週のメイン、マイラーズCをオースミタイクーンで優勝。初勝利が初重賞という離れ業だった。

 武幸は過去にG1勝ちが6つあるが、半数以上の4勝が8~10番人気での優勝。意外性があり、“持ってる男”でもある。土曜阪神のメイン、アーリントンCはミラアイトーンに騎乗するが、重賞を勝てる能力の持ち主だから楽しみだ。

 デビューからコンビを組み、夏の小倉で新馬勝ち。一息入れた昨暮れの葉牡丹賞2000メートルは追い込み馬の展開になり4着に敗れたが、折り合い面を考慮して7F戦に出走した前走は中団から完勝。上がり3F33秒8で鋭く差し切った。

 垢抜けた馬体は見映えも非常にいいが、なにより鋭い末脚はマイル前後の距離がベストとアピールしている。レース2週間後の2月12日に坂路で初時計。重賞Vへ態勢も整っている。

 今週は日曜日にも東西で重賞が組まれている。まず阪神の阪急杯はシュウジが中心。暮れの阪神Cはベストから1F長い7F戦だったが、中団前の位置取りから直線で一気に抜けてきた。距離克服は本格化を感じさせる内容でもあった。

 今回も同じ舞台の7F戦だが、仕上がりを言えば前走以上。圧巻はレース2週前の坂路追い。追走して3馬身の先着は51秒7-2F23秒6の猛時計だった。勝てばG1高松宮記念が視野に入る戦い。メンバー的にも勝利の可能性は高い。

 中山の中山記念は好メンバーがそろう。関西からはアンビシャス、ヴィブロス、リアルスティールなどが参加予定だが、最も注目しているのはリアルだ。ドバイG1連覇に向けて大事な始動戦。昨秋より仕上がりも進んでいる。2月9日の坂路で52秒4-2F25秒5をマーク。前向きさが出ている点に好感を覚える。鞍上ムーアで好結果を期待だ。(日刊ゲンダイ大阪記者)

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