そうした姿勢が国際社会からの孤立を深め、ますます核開発へと向かわせる。「アメリカは金正恩の首を取ることが、核開発をストップさせる近道だと考えています。今年の前半から半ばまで、遅くても年内には作戦を実行したい。トランプ大統領は非常に前向きな姿勢なので、実行可能性は高いでしょう」(高永喆氏)

 さらに、米メディアや国民からのバッシングにさらされている、トランプ大統領ならではの事情もある。「北朝鮮は対外的には長年、反米主義を掲げ、国内では自国の幹部130人以上を処刑した“ならず者国家”。米国国内世論も北朝鮮には批判的です。暗殺作戦成功とあらば、“米国を危険から守る”という宣言を有言実行したことになり、政権の支持率上昇にもつながりますからね」(前同)

 また、こうした思惑は韓国の朴政権も同様だという。「朴大統領に対する非難の嵐の中、朴政権を支えてきた与党陣営は窮地に立たされています。朴大統領も逮捕されかねない情勢ですが、世論の風向きを変えようと、与党勢力が考えた計略の一つが、金正恩体制が揺らぐほどの高官、VIPの脱北工作だったんです。実は、その最大のターゲットが金正男氏でした」(井野氏)

 そんな中、浮上したのが“金正男亡命説”だった。北朝鮮の情報を発信する『デイリーNKジャパン』編集長の高英起氏はこう語る。「2月11日、韓国メディアは“正男氏が韓国または米国に亡命”と報じました。これまでも彼の亡命説はあったものの、今回は非常に確度の高い情報と見られていたのです」

 そんな事態を避けるべく、金正恩氏は正男氏殺害に踏み切ったという見立てだ。こうして、形勢逆転の切り札を失った韓国与党勢力。「当初の望みが絶たれた今、次のプランとして軍や与党内で高まっているのが、“狂気の独裁者は消さなければならない”という、金正恩暗殺作戦の決行を促す声なんです」(井野氏)

 金正恩暗殺というカードを活用するには、韓国大統領選が行われる5月より前の3月から4月がベスト。ここにきて金正恩暗殺が現実味を帯びてきているのだ。

「暗殺作戦は全面戦争を防ぐための“予防戦争”です。奇襲的に金正恩の居場所、核施設などを攻撃する局地戦、短期戦となるでしょう。局地戦ならば北朝鮮住民が被害を受けるわけでもないので、中国やロシアが援護することもありません。過去にも、パナマ侵攻でノリエガを拘束。特殊部隊がイラクのフセインを拘束したり、パキスタンに潜伏していたアルカイダのビンラディン殺害などをやっていますからね」(高永喆氏)

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