日産GT‐R産みの親・水野和敏「本当の自分の人生は、60歳を過ぎてから始まる」未来を創る人間力の画像
日産GT‐R産みの親・水野和敏「本当の自分の人生は、60歳を過ぎてから始まる」未来を創る人間力の画像

 日産時代、日産のグローバルなフラッグシップ車として、日産GTRを作ったんですが、開発の当初は社内から猛反発ですよ。“今更、量産ラインで作るGT-Rが、手作り生産世界ブランドのポルシェやフェラーリに、勝てるわけがないから、やめろ”って開発の身内からは半年間言われ続けました。

「GT-Rの主要開発実験は社内テストコースでなく、ドイツのニュルブルクリンクサーキットでやる」と言ったら、“実験部としては、絶対に許可できない”等もう社内総出で、潰しにかかってくる。“この忙しい時期に水野さんの趣味に付き合う気はない”って系列部品メーカーにも仕事を断られ、まともに相手にしてくれませんでしたね。

 でも、何か今までにない新しいものを創ろうとする時、反対されるのは、当たり前。人は、過去を見て生きているから、前例がないことはやりたがらない。会議でもてはやされるのは、誰でも分かっている過去のデータですよ。

 それは結局、過去の復習でしかないんですけどね。いうなれば“ユーザーが知っているものを作り替える”だけ。だから、車が売れないんですよ。極端な例え話かもしれないけど、モナリザが評価されているから、もっと素晴らしいモナリザの似顔絵を描こうとしているのと一緒。

 アップルがなぜ、ブランド力があるかって、キーボードをなくしたからでしょう。キーボードって、人とパソコンを繋ぐ一番大事なインターフェイス。“それをなくせ”って会議にかけたら、猛反対だったでしょうね。それをなくして、タブレットを作ったから、今のアップルがある。

 じゃあ、どうやって未来の物を創っていくかっていったら、それは、人の思考力なんですよ。日本の一番の問題は人口が減っていること。それって脳みその総数が減っているってことでしょう。ソニーだって、昔ならトップブランドだったのが、今はサムソンと比べられているんだから。日本の国力の低下は、思考力が落ちてきているってことですよ。

 逆にいえば、日本をここまで発展させたのは、団塊世代の思考力ですよね。だから、60代以上の人たちには、定年過ぎて、隠居するのではなく、その思考力を活かしてほしい。

 本当の自分の人生は60歳を過ぎてから始まると思うんです。定年になって、会社を出されるということは社会に出られるということ。

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