単体では無害な2種類の物質を混ぜて劇毒に変える兵器を「バイナリー兵器」と呼ぶが、これが正男氏の暗殺に用いられたようだ。「女2人が巻き添えを食わなかったのは、そのせい。ただ、噴霧された薬液の量やタイミングが思い通りにならなかったため、予想よりも早く正男氏は絶命してしまったんです」(同)

 結果、空港は大混乱となり、死亡した男性が正男氏であることも即座に発覚、マレーシア警察の迅速な初動捜査に結びついたわけだ。「女2人による襲撃が失敗した場合は、保安検査後の制限区域内で、男性工作員が再度テロを仕掛けることになっていたようですが、いずれにせよ、正男氏を無事に機内に乗り込ませるはずでした。そして、ベトナム上空に差しかかった頃に機内で絶命させる計画だったわけです」(同)

 この場合、航空機に関する国際条約が適用され、エアアジアの本社があるマレーシア、領空で死亡が認められたベトナム、渡航先である中国に捜査権が認められるという。「こうなると、“三つ巴の捜査”となるうえ、中国は北朝鮮政府に遠慮して情報を小出しにするはずですから、捜査は難航し、遅れることが必至。襲撃班が撤収するのに十分な“時間稼ぎ”ができたはずです」(同)

 事件の全容が解明される日は来るのだろうか――。

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