その一方で、中国は金正恩朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮に対しても、従来の態度を一変させている。本誌でも繰り返し報じてきた、2月13日の金正男氏の暗殺事件が要因だ。「中国の制止を振り切って核開発に狂奔する金正恩体制を苦々しく思ってきた習政権は、対北朝鮮の重要な“交渉カード”として、国を挙げて身辺を保護してきた正男氏が謀殺されたことに激怒。北朝鮮を見限る決意を固めたようです」(全国紙デスク)

 もともと習国家主席と金正恩氏は肌が合わず、犬猿の仲だったといわれる。「金正恩は中国型の改革開放経済を迫る中国を嫌い、諜報機関に“習近平が今後、我々をどう扱い、どのような手段を用いるか、徹底的に調査しろ”と命じたこともあるほどです。中国にすれば今まで面倒を見てきたのに、それを無視して暴走を続け、保護してきた正男氏も殺されたことで二度もメンツを潰されたわけですから、黙っているわけがない」(前同)

 そのための動きともみられているのが、2月27日に明らかになった、中国の新型ミサイル開発だ。飛行速度は音速の10倍に達し、大気圏と成層圏の境界を飛ぶことができることから、古是氏も「日本も今のミサイル防衛システムでは、対応できない可能性が考えられます」という代物だ。

「中国が、この新型ミサイルの開発を、長距離や中距離で行っていることは確認されていましたが、短距離でというのは初めて。韓国のTHAAD対策であると同時に、北朝鮮への圧力とみられます」(前出の全国紙デスク)

 また、米韓は北朝鮮を意識した毎年恒例の合同軍事演習を3月1日からスタートさせているが、今年は過去に例を見ないほどの規模だという。「トランプ政権は本気で北朝鮮への軍事攻撃を考慮している」(前同)とされ、3月1日には、反発する北朝鮮が日本海にミサイル4発を放っており、その関係は悪化するばかり。ところが習政権は、米軍のこうした動きはおろか、直接的な攻撃すら黙認する可能性が高いという。

「米国が中国に断りなしに北朝鮮を先制攻撃することはありえず、事前に米中でなんらかの協議が行われるはず。一線を越えた最近の北朝鮮の暴挙の数々を考えれば、中国も反対できないかもしれません」(国際ジャーナリストの山村明義氏) 習国家主席が着実に進めている、“朝鮮半島潰し”。その動きは日増しに加速している。

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