自衛隊にも教えてあげたい!「ミリ飯」激旨アレンジレシピ

 最近、何かと気になる「ミリメシ=軍隊のメシ」。普通に食べてもうまいが、ひと工夫すれば、さらに――。その無限の可能性を追求する!

 最近、静かにブームを呼んでいる「ミリメシ」をご存じだろうか? 「ミリ」というのは、ミリタリー=要するに、軍隊のこと。世界各国の軍隊、日本では自衛隊が作戦行動を行う際に携行する、持ち運び可能な食料のことだ。

「専門的には“戦闘糧食”、英語では“レーション”と呼ばれます。国によってもちろん献立は違うんですが、基本的には主食+副食というスタイルで、湯せんなど最低限の調理だけで食べられるようになっているんです」(ミリタリーライター)

 日本の自衛隊の場合、その中でも、さらに種別があり、「戦闘糧食1型」「戦闘糧食2型」の2種がある。1型はカンヅメの形で2合分の白飯が入った「ごはん缶」と、カレー、牛肉の大和煮、肉じゃがなどのおかずやタクアンが入った「おかず缶」に分かれている。カンヅメだから、なんと3年もの長期保存が可能で、なおかつ作戦行動の際にヘリなどから落としても破損しない強度もある、ミリメシのスタンダードだ。

「通常は2年ほど倉庫に保管され、3年目になると大規模演習などの際に隊員に配布されます。ただ、いつも決まったラインナップが食べられるとは限らないので、調達に失敗すると、おかずがタクアン缶だけになってしまうという悲劇も起きるんですよ」

 こう話してくれるのは、元陸上自衛隊員で、現在はコラムニストという異色の経歴を持つ江田太郎さん。「2011年の東日本大震災で現地の復興支援に駆けつけた際は、自衛官用の屋外浴槽で湯せんして炊き出しにしたりもしました。このように急遽使うことも多く、決して在庫が安定しているとは限らないんですが、防災食としても優れているなと思いますね」(前同)

 とはいうものの、1型は自衛隊専用の官給品になるので、基本的に民生用には出回っていない。「ですが、レトルトパウチ式の2型をもとにしたものが、一般に“ミリメシ”として流通しています」(同)

 戦闘糧食2型は、缶ではなくビニールパックに入ったレトルト食品。保存期間が短くなるものの、1型では25分かかった湯せんが10分で済む、メニューも中華丼や筑前煮、チキンステーキなど30種類に増えている――といった理由で、現場の評判は上々だ。「平成4年に自衛隊がPKO活動でカンボジアに派遣された際、同じようにやって来た各国部隊の息抜きにと戦闘糧食のコンテスト、いわば“ミリメシ・ワールドカップ”が開かれ、そこでも自衛隊の2型は優勝を飾りました」(江田氏)

 それだけクオリティの高い日本のミリメシだが、実は、ここ数年はミリタリーマニアにとどまらず、一般消費者の間でも大ブーム。「防災意識の高まりもありますが、“軍用食”のイメージからは大きくかけ離れたクオリティの高さが一番の理由でしょう。実際、中華丼や牛丼、サバ味噌など、そのへんの食堂の味と変わらない質の高さです。ちょっとした非日常感が味わえるのも、人気の理由でしょうね」(モノ雑誌編集者)

 実際に自衛隊に納入している戦闘糧食は販売できないが、各社がパッケージを一般向けふうにデザインし直したものを購入できるので、自衛隊とまったく同じ味が体験できるのだ。「防災セットと題してセット販売もしており、非常時の保存食になるというイメージを打ち出そうとしています。ネットでも購入できるし、同社のホームページからも購入問い合わせができるようですね」(前同)

 昨年末に放送されたテレビ朝日系の『じゅん散歩』番組内でも、高田純次が自衛隊グッズ店で「武蔵富装」という会社のミリメシ「ウインナーカレー」を試食。「これは全然、いけるよ」と、味にも太鼓判を押した。

 注目度は高まる一方のミリメシだが、ちょっとした事件も起きている。「自衛隊の戦闘糧食は、支給されたものが余っても、返却はせず各々で処分することになっているんです。それをいいことに、昨年11月までに、当時、自衛隊の陸曹長だった男が自分の分のみならず同僚の分まで“親戚にあげたい”と言って集め、1個2000~3000円でネットで転売。販売個数はなんと1万点近く、売り上げも248万円になったそうです。事件後、当然、この男性は懲戒免職となりましたが、それだけ需要もあったということ。稲田朋美防衛大臣も、この件を受けての会見で“一般に販売することも検討したい”と、思わず述べたほどです」(前同)

 さて、そんなミリメシだが、いかにバリエーションも豊富でうまいとはいえ、行動食であるがゆえに、ごはんが多く、またおかずの味つけも、しょうゆや味噌味がほとんどで、すべて濃いめなのが難点。「正直、もうマンネリだなと思うこともありましたね。訓練中などは“ああ、もうちょっと違う味つけがあればなあ”としょっちゅう思いました」(江田氏)

 まして防災備蓄用に買うという人は多くの場合、同じメニューのパックを複数買うことになる(武蔵富装の『防災あつあつセット』だとウインナーカレー、すき焼きハンバーグ、中華風カルビの3品セット)。実際に災害が起こって避難生活が長引けば、なおさら飽きてしまいそうだ。

 そんなときのために、今回、本誌では誰でも簡単にミリメシを激ウマアレンジできる素材を探してみた。条件は、ミリメシ本体に準じて「加熱、調理不要、長期保存可能」であること。

 内訳は(1)お茶漬けの素、ポタージュスープの素、乾燥ネギ、おぼろ昆布などフリーズドライ&乾物系、(2)マスタード、タバスコ、マヨネーズなど調味料系、(3)納豆、キムチ、焼き豆腐など長期保存は無理そうだが、楽しんで食べる分には良さそうなトッピング……という調子だ。中にはインスタントコーヒー、ジャム、プリン……など、よく意図が分からないものも見えるが……。「まあまあ、思わぬ隠し味、ということもありますから」(江田氏)

 今ひとつ不安が残るが、とりあえずアレンジ研究を始めてみよう。使用するのは前述の「防災あつあつセット」。カレー、ハンバーグ、カルビと味つけしっかりめの、まさに働く男のメニュー3品だ。

 ちなみに、このメーカーのミリメシは湯せんの形式に応じて2種類ある。鍋などで湯せんをするタイプ(800円)と、湯せんもできるサバイバルキットが付属し、コップ1杯の水で湯せんが可能になるタイプ(1200円)だ。

 ものは試しと、今回は後者を選択。加熱剤を袋にセットし、白飯とカレーのパウチを入れて水を注ぐと、急激に沸騰し始める。これだけで、理科の実験のようで楽しい! 「コンビニ袋があれば、1枚かぶせておくだけで温め上がったご飯のツヤが違います。これは覚えていて損はないですよ」(江田氏)

 20分ほど待って、試食。最初に、どう考えても安全パイのカレー×マヨネーズを試す。ただのマヨでは芸がないので、パンに塗って焼くツナマヨを選択した。「これは間違いないですね。マヨネーズの酸味が、ちょっと甘口なカレーと合いますし、ツナの脂分でコクも加わります」(江田氏)

 カレー×マスタードも、同じように酸味がプラスされてコク深い味。しかし、意外だったのは、ここにタバスコを混ぜたときだ。「あれ? 全然違う……インドカレーみたいです!」と声を上げたのは、本誌編集部員のK。試してみると、確かにピリッとした唐辛子の味が引き立ち、ちょっとトマトっぽい雰囲気も加わって、かなりアリだ。今回使ったマスタードは粒なしのタイプ。よく肉料理のつけ合わせにも出るので、カルビ×マスタードの組み合わせも試してみたが、こちらも甘辛さと酸味がマッチして美味しい。

 さらに意外だったのが、カルビ×きのこポタージュスープの素だ。少量振りかけ、よく絡めて食べると、スープのミルキーさとキノコの風味が不思議とマッチ。洋風の味になった。「ミートソースっぽい、不思議な味っす。たぶんポタージュの乳成分が粉チーズ代わりなんですね。クセになります」(編集部員K)

 カレー、カルビの濃い味メニューは、今のところ問題なし。問題は残る一つだ。「すき焼きハンバーグは難関ですね。ただでさえ、すき焼き×ハンバーグの組み合わせメニューなうえ、この3品の中では比較的薄味ですし……」(江田氏)

 もとの味が消えてしまっては本末転倒。かといってネギやゴマは当たり前すぎる……と、悩んだ末、お茶漬けの素×すき焼きハンバーグの組み合わせを選択。少量をすき焼きの出汁によく溶かしてみたところ、海苔の風味とほのかな塩味が、すき焼きの甘みにジャストミート。あられのポリポリ食感も相まって、これはいける! いけるぞ!

 だが、その後、調子に乗ってお茶漬けの素をかけすぎたら、ただの塩辛いお茶漬け味になってしまった……絶妙な加減が必要な組み合わせなので、要注意。「ご飯の上におぼろ昆布をのせて、その上からすき焼きをかけると、昆布がほどよくしんなりして美味しいですね。ここに焼き豆腐とネギを足せば、本当のすき焼き顔負けの豪華さになりそうです。保存食というか、もはや普通の料理のレシピですが(苦笑)」(江田氏)

 ここで、編集部員Kが唐突に「うっ、うまい!」と叫び始める。いったい何が――と見ると、なんとカレー×インスタントコーヒーという、なんともマッドな組み合わせ。「これ、いけますよ! ちょっと焦げっぽい味がして、なんというか、オシャレなカフェで出てきそうな焼きカレーみたいで……」

 まさかと食してみたら、確かに意外にもコーヒーの香ばしさとカレーの風味がうまくマッチして、絶妙なコク深さ。もしや、これに先ほどのキノコポタージュスープの素を加えたら……。うまい。前述したミルキーなチーズ風の味が加わって、カレードリアか何かを食べている気分になれる。

 カレーの場合、単に何かをトッピングするというよりは、ルーに混ぜてしまうものによって味がかなり変わってくるので、いろいろと試しがいがありそうだ……と思った矢先、「んっ! んんホア~っ!」

 突如、江田氏が隣で苦しみ始める! 「プ、プリンを混ぜてみたんですが……これはダメです。コーヒーがOKならカラメルの苦さとコクでいけると思ったんですが……」

 いや、見るからにダメそうですけど……と思いつつ、恐る恐る食べてみると、甘いんだか辛いんだか、よく分からない、微妙な味わい。「ああ~……砂糖醤油のせんべいとかチョコポテチみたいな、コメントしようのない味ですね……」と、編集Kがつぶやく。

 お約束のようにオチを作ってしまったところで、この日はお開き。「しかし、思った以上に少しの手間で味の変化が楽しめるものですね……。避難などで長期にわたって生活リズムや食が単調になってくると精神状態も落ち込んだりしますから、備蓄食品の中に乾燥調味料の類をたくさん入れておくのは、精神衛生上も有用かもしれません」(江田氏)

 備えあれば憂いなしとは、まさにこのこと。いざというときのために日頃から、あなたも“お手軽激ウマレシピ”を考えておいたほうがいいかも!?

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