また、運動不足で筋肉に伸縮性がなくなると、周囲を走っている血管を圧迫するようになる。これが血管をカチカチにして、血圧を上げている場合もあるという。「そんな状態のまま、降圧剤を飲み、血管を拡張させようとしても、降圧効果は期待できません。さらに薬の量を増やすことにでもなれば、さまざまな病気のリスクを上げるだけです」
筋肉と血管の伸縮を繰り返す降圧ストレッチによって、筋肉はスポンジのように、しなやかな状態を取り戻し、血管の圧迫を和らげ、血液がスムーズに流れるようになるのだという。「第一にオススメしたいのは、特に縮こまりがちな胸から腹の筋肉を伸ばして刺激する、“胸のストレッチ”です。両手を背中側で組んで、組んだ両手が下に引っ張られるイメージで、ストレッチします。さらに、組んだ手を、そのままゆっくりと上に上げ、アゴを上げて胸を張り10秒キープ。大胸筋がストレッチされ、肺の周りの筋肉をほぐす効果が上がります」
日頃動かさない筋肉の代表ともいうべき、広背筋を伸ばす“背中のストレッチ”も効果が高いという。「丸太を抱え込むようにして、前方で両手を組み、背中を丸めることで背中全体を伸ばします。そのとき、手と肘は伸ばさず、両肩を前に出すイメージで、背中全体を伸ばし、10秒キープでOKです」
こうした薬に頼らない降圧メソッドを知るとともに、血圧に関する正しい知識や情報を知ることも、自分の健康を守るうえで、とても重要だという。加藤氏によると、我々が持つ、血圧に関する多くの誤解や古く誤った情報が、高血圧を国民病たらしめている大きな要因だと言うのだ。
たとえば、高血圧の原因というと、我々が真っ先に思い浮かべるのは「塩分の摂りすぎ」だが、「塩分と高血圧の関係が最初に問題視されたのは、1961年。50年も前の、ツッコミどころ満載のデータが根拠となっているのです。現在の日本人の食塩摂取量は、1日あたり平均10グラムほど。このレベルでは、塩分摂取と高血圧症に相関関係は見られないという結果が、近年の調査や研究で出ています」