ニオイ研究で知られる「嗅覚研究所」の外崎肇一氏は、こう語る。「病気になると、体内での物質の合成や化学反応が、健康時とは違ってきます。物質には、それぞれにニオイがあるのですが、それが血液や全身の細胞に行き渡り、汗や尿、吐く息などに混じって、体臭となって現れるのです」

 これを知らずに放置したり、表面的なニオイの問題としての対策しか取らずにいると、病状をより深刻にしてしまうことにもなりかねないのだ。「有名なのは、糖尿病。尿や体から、砂糖水のような甘いニオイがしてきます。また、胃の障害なら、卵の腐ったようなニオイ。腎機能に問題があるときには、アンモニア臭。肝臓が弱ってくると、ドブのようなニオイなど、それぞれ違ったニオイがしてきます。実は、がんにもニオイがあって、吐く息や血液、尿のニオイを嗅ぐことで、がんかどうかを嗅ぎ分けることができる“がん探知犬”を検査に活用しようという研究も存在するほど。ニオイを侮ってはいけないのです」(外崎氏)

 たかがニオイ、されどニオイ。放っておくと社会的評価のみならず、健康をも害することになるとは恐ろしい。とはいえ、自分のニオイは、自分ではなかなか分からないもの。日頃の健康維持はもちろん、少しでも異変があったら家族や友人、または同僚などに遠慮なく指摘してもらうこと。そんな関係性を作ることこそ、最大のエチケットであり、長生きの秘訣なのかもしれない。

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