今のプロレスは宝塚のような感じだね。店やっていると、“僕もプロレスラーなんです”なんて人もくるんですが、女の子のような体つきしてるんだもん。“スクワット500回くらい、できんのか”って聞いたら、やったこともないっていうんだから。俺らの時代は、500回なんて言われたら、“今日は少ない、ラッキー”なんて思っていましたから。1000回できて、当たり前。
笑って見ていられるプロレスになったんですよ。それが、いいのか悪いのかは言えないけど、時代の流れなんだなと思います。俺はあれが嫌いなんですよ。何十発ってひっぱたくやつ。ハエ叩きじゃないんだから、一発バチンって決めればいい。
自分たちの頃は、派手さはないけど、ピシッと理にかなった技だった。見ている方も、“本当に殺しちゃうんじゃないか”って思う、それだけの迫力があったんですよ。
ただ、みんな殺気立っていたわけですから、舐められたら終わりです。技も受けてくれない。今でも覚えていますけど、ミル・マスカラスは俺が、吉村道明さんの付き人として、背中を流したり身の回りの世話しているのを見ていたから、いざ、海外に武者修行となって、リングに上がったら、完全に舐めてかかってきた。
そういう時は、お客さんの見えないところで、絞め技をかけながら、ちょっと強めに、ガリガリやるんです。そしたら、大人しくなりましたけどね(笑)。
アメリカのプロレスは本場だけに、本当に凄まじいんですよ。警備員がいないような田舎の会場だと、観客にカミソリの刃で、足を切られたってレスラーもいましたからね。俺も、ヒールだったんで、観客にピストル向けられたことありますよ。
ただ、ヒールをやっていると、ブーイングを浴びるでしょう。あれが快感なんです。ブーイングが大きければ大きいほど、ましてやピストル向けられるほど、観客を熱くさせているわけですから。あれは他にはない、プロレスだけ。今でも、たまに夢で見るくらい最高の気分です。
あとアメリカは、足の引っ張り合いがすごい。キラー・カーンは薬物中毒だとか言いふらされた。俺は薬物なんて興味ないし、タバコも吸わないのに。でも、ハーリー・レイスが、“カーンはそんなやつじゃない”って言ってくれた。