この仕事をやっていて、楽しいのは“なんだこの音?”って思ってもらえるような音楽を作れるとき。去年、『モブサイコ』っていうコメディアニメの音楽をやったんですが、かなり自由にやらせてもらっちゃいました。チューニングをわざとめちゃくちゃにして、汚い音でグチャーって鳴らすんです。

 新しい楽器とか、新しい奏法とかを作れると楽しいですね。昔やった『リング』というホラー映画のときは、バイオリンを使ってるんですが、きれいに弾いたら、怖さは出ないだろうなと思って、ギーッってバイオリンが壊れるほどの、乱暴な弾き方をしてみたり。ガラスを引っ掻いたような気持ち悪い音で、もはや、音楽というかノイズに近かったですけどね。プロの人に、汚く弾いてくれなんて失礼なお願いはできませんから、自分で弾きましたね。

 曲を作るとき、自分が気持ちよくなることが大事だなと思うんです。そういうときは、上手く出来たときですから。それでしか判断できませんからね。自分を信じるしかない。

 まあ正直な話、仕事が来ればやるし、来なければやらないだけですよ。今年、還暦ですから、なるべく病気をしないように、ストレスなく生きていきたいですね。駅弁とかを買って、それをつまみに、家で缶ビール飲みながら、『ブラタモリ』を見る。これが、一番の楽しみですから。

撮影/弦巻 勝

川井憲次 かわい・けんじ
1957年4月23日、東京都生まれ。バンド活動の後、自宅録音に興味を抱き、CM等の仕事を経て映画音楽の世界へ。映画『機動警察パトレイバー THE MOVIE』、『GHOST IN THE SHELL攻殻機動隊』などの押井守監督の作品の音楽を手掛け、一躍脚光を浴びる。その他にも、『DEATH NOTE デスノート』、『貞子3D2』(13)などの映画の他、ドラマ『科捜研の女』シリーズや、大河ドラマ『花燃ゆ』などの数多くの有名作品の音楽を手掛けてきた。日本のみならず、韓国や中国が関わる作品にも音楽を提供。今年公開されるハリウッド映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』のエンディング曲も担当しており、世界的に活躍している。

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