「結果的に1~2時間ほどで目が覚めて、その後は浅い眠りを繰り返してしまい、睡眠不足のまま家を出ることになってしまいます。翌日の予定があっても、ちゃんと眠気を感じるまで活動して、いつもの時間に眠ったほうが、睡眠は短くても脳は休まるんです。つまり、“眠くなくても、とりあえず寝床に入って目を閉じていれば、脳の疲れは取れる”というのは真っ赤なウソ。寝床には眠くなってから、寝る直前に入るのが一番です」

 同じことは、実は朝の起き方にも通じている。「最近はサマータイムの導入が提唱されたり“朝活”が流行したりと、日中の活動時間を朝に広げ、早めに仕事を上がろうという雰囲気があります。加重残業が社会問題化していることもあり、企業でも早朝勤務を奨励するところが多いようですが、これも大間違いです」

 早起きは三文の得ということわざもあるように、習慣づけるのは悪いことではないような気もするが……。「“太陽光を浴びると体内時計がリセットされるからいい”と言いますが、この効果は実は1日しか持続せず、それだけで勝手に早起きの体に調整されるようなものではないんですよ。1日でもサボると途端に“ただ生活リズムがずれた人”になってしまい、体調不良などの原因となるだけなんです」

 つまり、朝型を習慣づけるためには、たまの休みに朝寝を楽しむのも厳禁。ひたすら同じ時間に起き続けなければならない。「2時間程度の早寝早起きに体内時計を調整するのに、約3~4週間は連続して同じ時間に起き続けなければならない。蛍光灯などの夜の光は、日光とは逆に体内時計を夜にシフトする働きがあるので、夜型の人ほど、この調整に時間がかかることになります。けっこうな苦行ですよ」

 では、寝酒でも飲んで、さっさと深い眠りに落ちればいいのかというと、これもまた睡眠の質を落とす要因なのだという。「アルコールは脳内物質と結びついて催眠効果をもたらすので、たまにビールを1杯程度なら、確かに効果的でしょう。しかし、それが習慣化すると逆効果。睡眠は前半は深く、後半は浅くなりがち。血中アルコール度数が下がって、催眠効果が切れるタイミングで眠りが後半にさしかかると、反動で一気に脳が覚醒してしまうんです」

 だからといって、毎晩、血中アルコール度数が下がらないほど飲むのも健康に悪い。悩ましいところだ。

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