「そして、脳が働きを維持するために必要な睡眠時間と、神経機能にとって必要な時間の間には、ズレがあるんです」

 ここで、先ほど飲酒の話で取り上げた「眠りは前半が深く、後半が浅い」という話を思い出してほしい。これは、まず脳機能の回復に必要な深い眠りを確保し、その後、浅い眠りで身体機能を回復しているのだ。

「現代人は目覚まし時計などによって、この後半が途中で遮断されがちで、身体やホルモン系の回復が足りていない。そのため、頭はスッキリしていても、体への負担が回復しきれていない人が多いんです」

 さらに、この機能の回復は、1日や2日必要睡眠時間を確保できれば行われるというものでもない。「週末の寝溜めが効果ナシというのは、脳が休まるという意味で半分はハズレですが、平日に崩した心身機能のバランスを回復するには足りないという意味では当たり。慢性的な疲れの原因は、こういうところにもあるんです」

 この“隠れ睡眠不足”の怖いところは、なまじ眠気を感じないが故に「解消しよう」という意識が働かないところ。こうして自律神経系のチューニングがうまくいかなくなれば、当然、健康にも悪影響がある。「ホルモン系の異常は、うつ病や不眠症、がんや急な心臓の発作など、あらゆる部分に影響しますから、深刻な問題です」

 解消には「よく寝る」以上の策はない。もどかしいが、それが事実なのだ。「現代に生きている以上、仕事も何もかも忘れて何日も好きなだけ眠るのは無理。ですが、3連休など長期の休みには、なるべく刺激を少ない状態にして、途中でブツ切りのように覚醒をしないですむ環境を作り、まず思う存分、寝るということも必要ですよ」

 明日の眠気もさることながら、未来の自分のためにも、やはり睡眠は大事。なるべく質のいい睡眠を取る習慣をつけたいものだ。

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