大手メディアの報道では、「日本危うし」が喧伝されている。もちろん、それ自体は正しいのだが、一部で見られる「韓国より日本が危ない」という報道は、完全な誤りだろう。

「日本は四方を海に囲まれているので、主たる脅威は弾道ミサイル。これは飽和攻撃(迎撃能力を超える数のミサイル乱射)されなければ、現在の技術で十分に迎撃可能。有事勃発後の難民の流入に関しても、最も深刻なのは、陸続きの韓国と中国北東部だ」(同)

 北朝鮮有事が勃発した場合、周辺国では、韓国、中国、日本の順で予想される被害が大きくなるわけだ。武力行使の尖兵となる米国は、「工作員によるテロを除けば、現段階では本土の安全は100%に近い」(前同)というから、軍人だけの被害にとどまりそう。

 トランプ政権になって米国が“世界の警察”に復帰したことで顕在化した北朝鮮クライシス。ここからは、極東有事で大きな影響を受ける日本、中国、韓国、北朝鮮の軍事力を分析しつつ、その本当の実力とでも言うべき“戦争力”をレポートしていきたい。

 まずは、我が日本から。「専守防衛を旨とする日本は、生命線であるシーレーンの安全確保と、領土、領海の保全が戦略目標です。顕在化している課題は、海を越えて飛来する北朝鮮の弾道ミサイル防衛と、尖閣諸島を含む南西海域にちょっかいを出している中国に対する備えです」(黒鉦氏)

 陸海空自衛隊の総兵力は約24万人。米軍が使用する装備と、国産開発した高性能装備で武装している。「完全志願制ですので隊員の士気、教育レベルとも高水準にあります。冷戦時は北方から侵攻してくるソ連軍の迎撃が主任務でしたが、現在は島嶼防衛や対テロ戦など、あらゆる事態に対処できる組織に変貌しつつあります」(軍事ジャーナリストの竹内修氏)

 具体的には、“日本版海兵隊”とも言える水陸機動団が、2017年度中に陸上自衛隊で新設される。さらに、抜群の機動力と輸送力を誇る垂直離着陸機オスプレイや、戦闘員を乗せて上陸が可能な水陸両用車AAV7の導入が進んでいる。「これで日本の離島防衛能力は大きく向上するので、尖閣や沖縄を狙う中国への備えになる」(幹部自衛官)

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