――大関には先場所の準優勝を受けて、夏場所での活躍が期待されます。

照 ひざの負傷以来、成績が安定しないので、まずは成績を維持していきたいと思っています。でも最近、相撲を取るのが楽しいんですよ。前は、そんなことは思わなかったのに……(笑)。たぶん、“相撲を取れること”自体が楽しいのかもしれませんね。

 自分が大関に上がった頃は、メディアを含め、たくさんの人がチヤホヤしてくれたこともありました。でも、ケガをしたら、周囲から人が……。自分はそうした時期も変わらず応援してくれた人たちを忘れないし、ずっと大切にしていきたい。そういう人たちのために一番一番、頑張りたい。自分が、どこまで行けるか試してみたいんです。

 取材中も、ひざの電気治療を受け、時折、苦痛に顔を歪めながらも、ヤンチャな笑顔を絶やさずに質問に答えてくれた大関。あの日、敗者となった武蔵丸は、「痛みに耐えてよく頑張った。感動した!」という小泉首相(当時)の貴乃花への祝福メッセージを聞いて、「自分だって精いっぱい戦ったのに……。もう、相撲を辞めよう」とまで思い詰めたという。

 現在、4人の横綱はいずれも30代である。春場所の“心の傷”を糧に、25歳の照ノ富士が角界の頂点に立つ日は来るのだろうか。今後を見守りたい。

照ノ富士春雄 てるのふじ はるお
本名=ガントルガ・ガンエルデネ 1991年11月29日、モンゴル・ウランバートル市出身。09年、鳥取城北高校に相撲留学後、11年1月、角界入り(間垣部屋)。13年3月の間垣部屋の閉鎖後、伊勢ケ濱部屋に移籍し、同年9月に十両昇進。翌年3月に新入幕を果たし、15年3月に新関脇、5月場所で初優勝(大関昇進)。昇進後2場所目となる秋場所13日目の稀勢の里戦で、右ひざを負傷し、その後、両ひざのケガ、左の鎖骨の骨折などの影響もあって成績が低迷。今年の初場所も4勝11敗と大きく負け越したが、カド番で迎えた春場所では13勝2敗と好成績。新横綱・稀勢の里との優勝決定戦は記憶に新しい。身長191センチ、体重174キロ。得意は右四つ、寄り。

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