その証拠に、澄子は意外とセリフが少なく、ぼんやりしていたり、気のない相づちを打つだけだったりすることも多いため「語らない」芝居が求められるのだが、表情だけでも十分、澄子の人柄が伝わってくる。しかも彼女は毎度、エピソードにオチをつける乙女寮のボケ担当。ちゃんと笑わせる芝居ができる松本は、「独特の愛嬌」と「間合いの良さ」というコメディエンヌの素養も持ち合わせているのだ。

 それにしても、この回のラストはステキだった。病院からの帰り道、おなかを減らして歩く一行の目前にラーメン屋の屋台が。和久井映見(46)演じる愛子がおごってくれることになり、まだ具合が悪いと佐久間由衣(22)演じる時子におんぶされていた澄子は、急に元気になってみんなを笑わせる。

 たった2分間のこのシーンを何度も繰り返し見た。「待ってました」と合いの手を入れたくなるほどのベタベタさと、最後までクスッと笑わせてくれた澄子のかわいらしさがグッとくる。ラストカットはのれんをくぐった乙女たちの満面の笑み。そのあふれ出る“朝ドラ感”に、「スクリーンショットしておきたい」と本気で思った。食いしん坊キャラである澄子の主役回で、食べ物オチだったというのもさすが! 泣いたり笑ったりした後の幸せな映像に、“あぁ、今日も朝ドラ見たわぁ”と、何も食べていないのにおなかいっぱいになった。(朝ドラ批評家 半澤則吉)

朝ドラ批評家半澤の朝ドラブログ
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