刑事たちは3時間ほど待機し、午後4時くらいに引き揚げていったのだが、再び5時半頃、また、男から電話がかかってきたという。「また“今すぐ伺います”と言うんですが、私は、お店に行かないといけないので、“今から出なくちゃいけない”と伝えると、男は“では明日の午前10時に伺います”と。それで、また荻窪署に電話をして、翌日も刑事さんがうちで張り込みをすることになったんです」

 振り込め詐欺、架空請求詐欺、還付金詐欺などに代表される「特殊詐欺」とは、不特定多数の者に対して電話、FAX、メールなどの通信手段を用いて現金などをだまし取る詐欺のこと。「今年2月の警察庁の発表によれば、2016年の特殊詐欺の被害額は406億3000万円と2年連続で減少したものの、認知件数は1万4151件で前年比2.4%の増加。被害者の約8割を占めるのが65歳以上の高齢者です」(全国紙社会部記者)

 坂上ママ、淳子さんのケースは、まさにそれだったわけだ。二段構えの「銀行カード詐欺」に、どう立ち向かったのか。本人の話を続けよう。

「犯人は翌11日の午前10時に来ると言っていましたが、実際に来たのはお昼頃でした。荻窪署の刑事さんは前の日とは違う2人でしたが、午前9時にはうちに来て待機を開始。犯人を現行犯逮捕するための打ち合わせを3人でやりました。逮捕するためには、私の銀行カードを犯人が実際に受け取る必要がある。なので、受け渡しの瞬間には玄関近くの、バスルームに向かう廊下に潜んでいる刑事さんたちに聞こえるように、私が大きな声を出すことになったんです。緊張感でドキドキだったかって? いや、そうでもなかったです。刑事さんが一緒にいてくれる安心感があったからと思いますが」

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