約束の10時から2時間後の正午頃、チャイムが鳴った。淳子さんはすぐに、対応に向かった。

「出ると若い女なんですよ。黒のパンツスーツに白ブラウス、黒のカバンという、いかにもきちんとした会社員らしい格好はしてるんだけど、5センチはあろうかというつけ爪にクルクルの付けまつげ、幽霊みたいに白く塗った顔に真っ赤な口紅という姿を見て私、思わず笑い出しそうになっちゃった。あ、この子アルバイト? って(笑)。もうバレバレ。それで、まずは彼女が出してきた書類に銀行名と私の名前を書き込むと、“それではキャッシュカードをお預かりします”と女が言うから、私は“はい、これがカードです”と、わざと大きな声を出したんです」

 カードが女の手に渡った刹那、淳子さんの脇をすり抜けて2人の刑事が飛び出す。「12時○分、容疑者を確保!」 現行犯逮捕。ドラマのままに、刑事に手錠をガチャッとはめられた女は、能面のような表情のまま、その場で固まっていたという。捕まった女は、いわゆる“受け子”だったようだが、特殊詐欺はなかなか逮捕に至らない。

 警視庁からは、「最近では、キャッシュカードをだまし取る手口が急増しています。どんな名目でもキャッシュカードを自宅に取りに行くことはありません。間違いなく詐欺ですので、すぐに警察署への通報をお願いします」との回答があった。

 今回のお手柄で警察から報奨金として金一封が贈られた淳子さんは、「まさか自分が、こういう体験をするとは」と言いながらも、「詐欺に引っかからないためには、一度立ち止まってみることが大事だと思います。それで少しでもおかしいと思ったら、すぐに警察に電話をすることですね」と話してくれた。

 見事、詐欺犯を返り討ちにした淳子さん。さすがは坂上忍ママ! 犯人は相手を間違えたようである。

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