寿司職人が語る「アニサキスは怖くない」の画像
寿司職人が語る「アニサキスは怖くない」の画像

 夏が近づき、食中毒が気になる季節だが、最近、“アニサキス”による食中毒の急増が、世間で不安視されているのをご存じか。「厚生労働省の統計によると、2007年には6件だったアニサキスの報告件数が、16年には124件と約20倍に。この件数も“氷山の一角”との指摘もあります」(全国紙社会部記者)

 芸能界でも、渡辺直美や庄司智春などが、アニサキスによる食中毒体験を話して注目を浴びたが、話題なのは日本だけではない。「あるイギリスの医師会雑誌が“寿司を食べる人にアニサキス症患者が増えている”と報告し、BBC(英国国営放送)が大々的に報道したんです」(前同)

 なんと、日本食の代表とも言うべき“SUSHI”が食中毒の原因と名指しで指摘されてしまったのだ。世界的な寿司ブームに水を差す、この報告。そもそも、アニサキスとは何者か。「アニサキスは魚介類に寄生する“白い糸”のような線虫の一種。体内に入ると、食後数時間から十数時間で腹部の激しい痛みや嘔吐などの症状が出るんです」(医療ジャーナリスト)

 寿司や刺身などの生魚を食べると、アニサキスが体内に入る危険性があるという。不安になった本誌は、都内にある老舗寿司屋の大将A氏(63)に、取材を試みた。本誌の質問に対し、「きちんとした職人がいる寿司屋や和食店で食べれば心配はいらないよ」と心強い答え。

 続けて、「寿司屋では、アニサキスを“糸くず”って呼んでるんだけど、職人は修業する中で、糸くずを取り除くことを親方に叩き込まれるんだよ。私も修行中のとき、親方に“切り身に糸くずがついてるじゃねえか。こんなんじゃ、お客が腹痛を起こすだろがよ”って、ゲンコツを食らったもんだよ」

 アニサキスは、長さが2~3センチ。切り身にするときに、しっかり見て取り除けば、問題はないという。「イカに細かい切れ目を入れるのは、食べやすくすることもあるんだけど、糸くずを“殺す”目的もあるんだ。糸くずは白いから、イカなどでは見落とすこともあるからね」(前同)

 アニサキスはもともと魚の内臓に棲息し、魚が死ぬと肉身(筋肉)のほうに移動していく。つまり、すぐに捌き、内臓を取り除けば危険は格段に減るという。「寿司屋は市場から仕入れると、すぐ捌くんだ。私も若い頃に“自分のメシより先に、すぐ捌け!”と怒鳴られたもんです」(同)

 糸くず対策以外も、寿司職人は修業の中で、生魚を安全に食べるための工夫を叩き込まれるという。「最近は、海外も国内も含めて、修業もしてない職人が平気で寿司を握っているだろ。俺はね、そういうの、偽SUSHIって呼んでるの。酢飯にもワサビにも、酢締めにも叩きにも、意味があるんだよ、“毒消し”とかのね。カルフォルニアロールだっけ? ああいう“変わり種”とか食って、腹を壊して寿司離れが進んだら、こっちもたまったもんじゃないよ」(同)

 猫も杓子も寿司を握る世界的なブームの代償か。何はともあれ、安全でうまい寿司の提供を願いたい。

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