意気消チンして、不発に終わった模様だが、<そうするうちに廊下でなんか音がするんで開けてみたら、黒山の人だかりでね。そこで働いている人たちがみんな聞いているんです>

 結局、これに懲りて、以後、健さんがオトナのお店に足を踏み入れることはなかったとか。

■強烈すぎる豪快逸話を残す『仁義なき戦い』出演者たち

 昔気質の任侠路線がマンネリ化した後、『仁義なき戦い』(73年)のヒットを境に、リアルなアウトローの姿を描いた実録路線が東映の主流となる。そのエースといえば、もちろん菅原文太である。

「松方さんの証言によると、文太さんとはウマが合い、翌日朝から撮影があっても、お構いなしに一緒に大酒を飲んでいたようです。ただ、文太さんは悪酔いして周囲にからむので、お店の女の子たちはドン引きだったとか」(映画雑誌の編集者)

 連日の深酒は、撮影に支障がないのだろうか? 「ありますね(笑)。やはり、撮影に本腰が入るのは決まって午後からだったとか。サングラスをかけて演じる場面がたびたびありますが、あれは二日酔いで目が腫れているからです」(前出の映画関係者)

『仁義なき戦い』のメンバーの中で、女性絡みのエピソードが豊富なのが、梅宮辰夫と山城新伍だ。「代表作である『不良番長』シリーズは、2人が女優に必ず手を出すことから、ヒロインのキャスティングが難航。しまいにはカルーセル麻紀が起用された――という話は有名。とはいえ、最後は、そのカルーセルも口説かれたとか」(前出の編集者)

 この3月に他界した渡瀬恒彦は、『仁義なき戦い』シリーズ2作品に登場する。渡瀬もまた、よく飲み、よくモテたというが、同時に親分肌の人物だった。志賀勝、川谷拓三、室田日出男、小林稔侍、片桐竜次、野口貴史ら『仁義~』にも出ている脇役、斬られ役の俳優を束ねて、『ピラニア軍団』として盛り立てたことはよく知られる。

 元東映女優の橘麻紀さんは、ピラニア軍団と行動を共にしていたことから、“女ピラニア”と呼ばれた。現在は練馬でパブを経営する彼女は、こう語る。「ピラニア軍団は、いつも中島貞夫監督の家か渡瀬さんのマンションに集まっていました。好き放題、食べて飲んで。でも、誰一人、会費を払ってないし、手土産も持って行ったこともないんです(笑)」

 主演スターは、酒豪ぞろいのピラニアたちの大スポンサーだったようだ。

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