“記念”という冠のついた2日続けての重賞レース、「鳴尾記念」と「安田記念」は、気持ちとは裏腹に、明と暗がはっきりと分かれてしまいました。

 すべてがうまくいったのは、1つ目の「鳴尾記念」です。このレースのパートナーは、ステイゴールドを父に、シアトルサンセットを母に持つ6歳のステイインシアトル。といっても、デビュー2戦目の後に脚部不安のため1年7か月の休養を余儀なくされ、この日がキャリア10戦目です。他に行く馬がいなかったら逃げてもいいし、2番手からの競馬でもいい。重要なのは、自分のペースで走れるかどうか。勝負のポイントは、その一点にかかっていると思っていました。

 結果は……100点満点の120点。この世界では“馬が競馬を覚える”という表現を使いますが、この日のステイインシアトルはまさに、その言葉通りのレース運び。まるで、このリズム、このテンポだよねとでも言っているかのような走りで、乗っていて頼もしさを感じました。

 この後は、馬の様子を見ながらということになりますが、7月16日の「函館記念」か、8月6日の「小倉記念」が有力候補です。函館か、それとも小倉か!? 馬はこれから、まだまだ良くなりますから、楽しみにしていてください。

 明から暗へ。今でも奥歯を噛みしめたくなるのが、2日連続の重賞勝利を目指したG1「安田記念」です。キタサンブラックと並んで、今年の大きな柱になるエアスピネルに大きな勲章をプレゼントしたい。いや、力を出し切ったら取れるはずだ。そんな強い気持ちで臨んだレースでした。

 スタートは、ほぼ互角。レース前半は無理に前のポジションを狙わず後方へ。芝の状態が良く、ロスのない内ラチ沿いを走り、ここまでは、ほぼ思い描いていた競馬でした。

――あそこで。あのときに。 悔いが残るのは4コーナーです。前があく瞬間……ゼロコンマ何秒かのチャンスを待ち続け、あいたと思ったその瞬間、ミルコとレッドファルクスのコンビに先を越されていました。競馬は結果がすべて。レースが終わった後に、あれこれ言っても始まりませんが、それにしてもあそこで前に入っていれば……。そう思えるだけに、悔しさだけが残ります。

――大切なのは負けを引きずらないこと。 これが勝負事の鉄則であり、何度か僕も、このコラムの中で触れてきました。でも――引きずることと、忘れないことは違います。今週、来週で春競馬は終わり、7月から夏競馬に突入するので、この悔しさを晴らす舞台は秋になりそうですが、夏を越してまた強くなるだろうエアスピネルに負けないよう、僕自身、さらに上を目指します。

 日本ダービーが終わり、安田記念が終わっても、競馬に終わりはありません。季節は梅雨に入りますが、今年も競馬場で、ビールと競馬を思いっきり楽しんでください。

本日の新着記事を読む