若狭氏は14年の衆院選比例区で初当選。昨年、国会議員を辞職した小池氏の後釜として東京10区の補選に立候補して当選した。

 東京の下町・葛飾区に生まれ、足立区で育った庶民派の若狭氏は中大法学部卒業後、司法試験に合格。83年から09年まで検察官として東京地検特捜部副部長、同公安部長などを歴任。09年に弁護士登録して以降、テレビ番組のコメンテーターとしても活躍した。「素朴な正義感」を基軸にした活動は、政治家になっても変わることがない。

「検察官として30年近く仕事をし、多くの修羅場を体験した私に言わせれば、最近の総理官邸のリスク管理は穴だらけです。森友学園、加計学園の問題、文科省から流出したとされる文書の問題、これらは一つに、しがらみ政治に由来する。

 森友学園への国有地売却問題では、近畿財務局の職員に対する大阪地検特捜部の捜査はすでに相当進んでいるはず。刑事事件に発展する可能性は高いと思う。ま、関係者はたいてい“書類はない”と最初は言う。ないと言われて“はい、そうですか”では捜査にならない。自分の経験から言うと、ああいうふうに“ありません”と言ってる書類はまずあるんですよね(笑)。

 一方、加計学園の問題はより根が深い。“官邸の最高レベルが言っている”“総理のご意向”と記された文科省の文書について、菅官房長官は怪文書扱いしただけでなく、はなから“調査する必要はない”と言い続けた。木で鼻を括るような対応に終始したのは、極めて稚拙。一般企業のコンプライアンス関連会見で、あれをやれば問題になる。書類の存在を明言した前川喜平前文科省事務次官の会見を見ても、私がライフワークにしている“嘘の見抜き方”の一つである“うそ反応”は見られなかったし、私も経験上、文書の書きぶりからしても“これは本物だ”と、すぐ分かった。

 5月29日に進退伺いを出したときの会見で、私は“あんな対応してちゃダメだよ。分かってないなぁ”ってことを言ったんだけど、菅さんには伝わらなかったみたいですね(笑)。いったい、いつまで“知らぬ存ぜぬ”を続けるつもりなのか(編集部注・この取材日である6月9日、松野博一文科相は文書の再調査を文科省に命じ、15日には文書の存在が確認されたとして謝罪した)。

 元TBSワシントン支局長でフリージャーナリストの山口敬之氏の逮捕が見送られたことも、悪質な案件。巷間伝えられるように、安倍首相と親しいからなどという理由で万が一、逮捕が見送られるようなことがあれば世も末。聞くところによると、所轄署の逮捕状執行には検察官にも報告し、その了解を得ていたそうなんです。にもかかわらず、警視庁本部の中村刑事部長が突然、逮捕状の執行中止を命じたわけです。刑事実務として、ありえない話です。

 中村部長は以前、菅官房長官の秘書だった人ですから、裁判官が逮捕の必要性を認め、逮捕状の発付までしたのに、なぜ、その裁判官の判断を尊重せず、逮捕状の執行を中止させたのか、あらぬ誤解を招かないためにも説明責任を果たしてほしいですね」

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