北朝鮮・金正恩独裁政権を脅かす「ニューリッチ層の台頭」の画像
北朝鮮・金正恩独裁政権を脅かす「ニューリッチ層の台頭」の画像

「またか……」と言うほど、北朝鮮のミサイル発射実験が止まらない。「5月14日、21日、29日、6月8日と、4週連続で発射実験を強行。しかも、この春の軍事パレードで公開された新型の4つのミサイルで、北朝鮮が兵器開発に力を注いでいる実態が、改めて明らかになりました」(防衛省関係者)

 加えて、北朝鮮の“大本営発表”では、「大陸間弾道ミサイル(ICBM)を試射する手筈は、すでに整っている」(労働新聞=5月31日)と明言。これには、北朝鮮の動向を注視する米国も反応。トランプ大統領の側近で“狂犬”の異名を取るジェームズ・マティス米国防長官は、「北朝鮮の兵器計画は、我々にとって、明確かつ現存する危険だ」と強調した。

 まさに、軍拡一直線の北朝鮮。だが、ここで気になるのは、各国から経済制裁を受ける金正恩体制に、なぜ先立つ“金”があるのかということ。「これらミサイル、核兵器の開発が進んだ背景には、北朝鮮の成金たち――“ニューリッチ層”の存在があるんです」と言うのは、通信社記者。「正恩は、核やミサイル開発を推進するため、人民に、知恵と工夫をこらして外貨を稼ぎ、物資を調達せよ、と厳命してきたんです。ヤミ取引も黙認する姿勢を示しています」(前同)

 政府は、彼らの稼ぎの一部を“年貢”として徴収してきたが、一方で、「これをチャンスに」とホリエモンよろしく商才を発揮し、“ニューリッチ”に成り上がる人々が続出。一見、政権も国民もWIN-WINの、良好な関係に思えるが、外交評論家の井野誠一氏は、「これらの政策は、正恩にとって“諸刃の剣”です」と、現政権下、北朝鮮内では政商に近い成金が目立ってきた点を指摘し、こう続ける。

「成金が軍や情報機関と結託し、政権に対抗しうる“権力グループ”を作れば、国内の不安定化は避けられません。そうした抵抗勢力の勃興を恐れ、正恩は何度も各機関のトップ、主要幹部の人事を断行しますが、対抗する成金たちはアノ手コノ手で人脈を駆使し、富や利権を保持し続けます」

 当然、ニューリッチ層があまりに力をつければ、正恩氏も大ナタを振るう。その代表例が、2013年末の「張成沢処刑事件」だという。「張の周辺を調べる中で、張の庇護を受けて商いを展開し、巨万の富を持つ成金たちの実情が明らかになりました。張は彼らを重用する一方、裏ビジネスや、“汚れ仕事”を任せていました」(前同)

 その折は浄化されたとはいえ、かの事件から3年以上が経過。ニューリッチ層の集金手段も、先鋭化の一途を辿っているという。「新興の成金層が、軍や国家機関の人間による物資の横流しなど、“密輸ビジネス”に手を染めるケースも後を絶ちません。薬物の売買も当然あります。そうした汚れ仕事の見返りは、ヤミ市場(自由市場)の開設の黙認。最近、このヤミ市場の規模がグンと拡大しており、成金層の蓄財も進んでいます」(同)

 配給制度もとっくのとうに崩壊し、民間人の怒りは爆発必至。金を貯め込み、党幹部を抱き込んで“大謀反”――正恩氏のクビをハネ飛ばせるのは、政商たるニューリッチ層か!?

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