アメリカ本土に到達する「北朝鮮のICBM」、もし日本に発射されたら迎撃不可能!?の画像
弾道ミサイル発射実験を視察する金正恩氏(5月28日のもの)

 北朝鮮が突如発射した弾道ミサイル「火星14号」は、迎撃不可能なとんでもないシロモノだった――。

「4日午前中に発射された北朝鮮の弾道ミサイルは、長距離を飛翔するICBM(大陸間弾道ミサイル)です。打ち上げ軌道をかなりアップライトにとっているため、日本のEEZ(排他的経済水域)に落下しましたが、最大射程が出るように軌道を変更すれば、ICBMの定義である5,000km以上を飛翔すると思われます」(防衛省関係者)

 米韓当局や専門家筋は、火星14号の最大射程を7,000km程度と推測しており、米軍基地のあるグアムやハワイ、米本土アラスカ州の都市にも到達する。そのため、トランプ政権に強い衝撃が走ったことは間違いない。ただ、一方で、「日本をメインターゲットとしたノドン(火星7号、射程約1,300km)やテポドン1号(銀河1号、射程約1,500km)ではないため、ICBMの発射実験は日本は関係ない」という議論は誤りである。

「弾道ミサイルにはそれぞれ適正な射程があるため、5,000km以上を飛翔するICBMは日本の脅威でないようにも思えます。ただ、今回の実験のように、ロフテッド軌道でICBMを発射した場合、日本もターゲットに入るのです」(軍事ライターの黒鉦英夫氏)

 ロフテッド軌道による発射とは、極端に言えば弾道ミサイルを垂直に近い状態で打ち上げ、超高々度の宇宙空間に到達させ、そのまま地上目標に対し真っ逆さまに落下させる技術だ。

「この軌道の利点は2つあります。超高々度に到達するため、イージス艦のSM3(スタンダードミサイル)による迎撃が困難なこと。加えて、超高々度からマッハ10を超えるすさまじい速度で地上に落下してくるため、PAC3(ペトリオットミサイル)でも迎撃が困難なことです」(前同)

 海自のイージス艦が発射するSM3は、最大射程が1,000kmで最大射高は500kmしかない。現在、米軍と共同開発中のバージョンアップ型SM3ブロックII(2021年度配備予定)になると、最大射程が2,000km、最大射高が1,000kmと大きく伸びるが、それでも火星14号がとった最大射高である2,800kmには届かない。SM3が撃ち漏らした場合、PAC3が対処することになるが、PAC3の最大射程は20km、最大射高は15kmしかない。

「ノドンやテポドン1号ならば迎撃は可能ですが、火星14号のようなICBMをロフテッド軌道で発射された場合、これを迎撃するのは非常に困難です」(前出の防衛省関係者)

 米本土を狙った北朝鮮のICBMは、実は日本にとっても大きな脅威だったのだ。

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