――26歳のときに、奥様(愛さん)と結婚。21年にはお嬢さん(梨愛ちゃん)も誕生しました。

嘉風 気づくと、30歳になっていました。その頃、年下の松鳳山、大学の後輩・妙義龍が自分より早く三役になったんですね。妻がサラッと言うんです。「彼らが三役になっているのに、なんでマーくん(嘉風の愛称)はなれないの?」って。妻は多少負けず嫌いなところもありますが、そのひと言で気づいたんです。(三役に上がれなくて)悔しいのは、自分だけじゃない。周りの人も悔しいんだ。だから、何かを変えなくちゃいけない! と。

 そうは言っても、もう30歳。今からバシバシ稽古をするのは難しい。そこで、それまでもトレーニングはしていましたが、専属トレーナーをつけて体を作り直すことと、食生活を変えることを決めたんです。すると体が強くなって、大きな相手と対戦しても痛くないので、恐怖心を感じなくなった。思いっ切り相撲が取れるようになったことで、結果も出だしたんです。

――26年夏場所、32歳にして新三役(小結)に昇進しましたね。

嘉風 だいぶ遠回りしましたけどね(笑)。ただ、その翌場所、前頭2枚目だった自分は2横綱、2大関を倒しながら、後半戦、平幕力士に5連敗して7勝8敗と負け越してしまったんです。場所後、知人に「後半、失速したね」と言われたときに、自分が「上位の人を倒しているのに、平幕の力士に負けたら、みっともない」と思っていたことに気づかされたんです。他にも「ヘンな相撲を取ったら、かっこ悪い」とか。つまり自分との戦いに負けていたんですね。そこで、メンタルの修業を始めたんです。

 それまで年間90日ある本場所中は、いつも緊張していて、1日たりともおろそかにできない、という考え方でした。でも、心の持ちようを変えようと努力してからは、緊張している自分を受け入れられるようになったし、楽観的に考えられるようになったんです。

 35歳で小結に復帰したことで“進化する35歳”なんて言われたりもしますが、体力的な進化じゃなくて、気持ちが充実していることで、爆発的に力が出るようになった。それが夏場所の8勝、勝ち越しにつながったんだと思います。それと、去年9月、目が内出血して腫れているときに、目のケガは慣れっこなんで病院に行かなかったんですね。そしたら妻が病院に行ってくださいって。いつ辞めても満足なくらい最近、頑張ってるじゃないって。必死にやってると伝わるんだな、やっていたことは間違えてなかったんだと、すごく心に響きました。

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