「僕の場合はたまたま、官房長官秘書官からの圧力でしたが、いろんなレベルで行われています。たとえば、官邸の広報官や事務方の官僚が、官邸詰めの記者個人に“昨日の報道なんだけど……”とやることも一つ。さらに官邸から見て放置できない記事だと判断すると、記者個人ではなく、政治部デスクや政治部長といった上司や周辺に抗議する。「I am not ABE」のときには、官邸が許せないと思ったから、報道局へ直に圧力が入ったんですよ。

 こうしたことは民主党政権時代にもありました。ただ、それは個別のクレームでした。安倍政権が民主党政権と決定的に違うのは、日常的かつ網羅的に文句をつけ、機を見てガーンとやること。従わなければ徹底的に個人攻撃してきます。それから、すでにお話したようにマスコミのトップを押さえていることですね。菅官房長官も官邸詰めの記者らを手なずけていますし、オフレコ取材を利用して自分たちの意思が漏れ伝わるようにもしている」

 加計学園問題で安倍政権が窮地に立つ中、安倍首相は6月24日に行った神戸市内での講演会で突然、これまで加計学園にしか認めなかった獣医学部を全国に解禁すると方針転換。6月25日放送の『真相報道バンキシャ!』(日本テレビ系)は、安倍首相は周囲にその理由を「あまりにも批判が続くから頭にきて言った」と漏らしたと報じた。

「京都産業大学の参入の機会を奪い、加計学園に絞るための条件を設定したことに問題の本質があります。ところが官邸は、“安倍政権は岩盤規制に穴を開ける正義の味方”というすり替えを必死にやっているんです。それを証明するために、<閉鎖的な文科省に対して頭にきた。本当は全国で獣医学部を作りたかったんだ→しかし、文科省は認可しない→だから文科省は抵抗勢力>という論法にしたい。まあ、官邸にとって、そのシナリオ作りまではよかったんですが、演者(安倍首相)が悪くて、シナリオが国民に伝わりませんでした。そもそも、森友問題や加計学園の問題を通して、安倍総理自身への批判が最近の支持率低下につながっているわけですが、安倍総理は、“政策がちょっと悪かっただけ”だと思っていて、自分が攻撃されているとはいまだに思っていません」

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