その“被害者”が、捕手の小林誠司。交流戦の最中、6月1日の楽天戦で、巨人は2点リードの6回にウィーラー、アマダーに連打され、逆転負けで7連敗目を喫した。巨人軍OBの“マイクを持った盗塁王”こと緒方耕一氏は、このときの小林のリードを<積極的に打ってくる外国人選手に対し、あまりにも安易な配球。技巧派右腕の田原の特性を全く考えていない>と批判。(6月2日「日刊スポーツ」)

 もちろん批判自体は的外れではないのだが、こうした声が小林をより頑なにし、さらに由伸監督の判断を狂わせている面があるという。その2日後のオリックス戦、巨人は初回に4失点。そして、まるでその責任を取らされるかのように、小林は一度も打席に立たず、無死一塁のチャンスで代打を送られる屈辱を味わった。

「周囲の小林批判に“迎合”したとも取れる采配でしたが、この一件で、監督と小林の信頼関係は崩れてしまいました。外野の声を聞きすぎると、こうした弊害が起きるんです」(前同)

 それでも、“言いやすい”相手に向かうのが批判の常。6月6日の西武戦、エース・菅野智之が6回4失点で降板し、球団ワーストタイの11連敗となった翌日。かつて長嶋巨人を支えた“完全試合男”槙原寛己氏はBSで、この試合の解説を務めながら涙し、翌日(6月7日)の「スポーツニッポン」に<今後、小林に代わって実松を起用するのも手だろう><伝統球団ゆえの宿命を(中略)胸に刻んでほしい>などと寄稿している。

「これだけ袋叩きにされては、誰でも委縮しますよ。他球団では打てていたのに、巨人に移るとバットが湿ってしまう選手がいるのも分かります」(NPB関係者)

 逆に、巨人を出たとたん、嘘のように才能が開花する選手もいる。日本ハムに移籍した大田泰示が、その分かりやすい例だ。放出した選手が大活躍するのは屈辱的な話。広岡氏も<大田放出は巨人の恥>(『週刊ポスト』6月23日号)と大批判している。「一挙手一投足をチェックされていた巨人時代と違い、今は楽しそうにやってます。このトレードは、大田には吉と出ましたね」(前同)

 そういえば、小林も巨人を離れていたWBCではバカスカ打ち、代表の正捕手として強気のリードで勝利に貢献していたような……。

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