「多臓器不全」突然死の恐怖の画像
「多臓器不全」突然死の恐怖の画像

 6月28日、西武ライオンズのコーチ、森慎二さんが遠征先の福岡で急逝した。享年42。昨年、一軍投手コーチに就任したばかり。あまりにも早い死だった。「直前まで、普段とあまり変わりなかったんですよ」と、球団関係者は今でも信じられない様子で嘆く。

 同月25日、森氏は宿舎から球場に向かう途上で変調をきたし、緊急入院して手術するも結局、意識は戻らず、28日12時10分、ついに帰らぬ人となった。なぜ、こうも急に容体が悪化したのか? 球団は、死因を「多臓器不全」と発表。この言葉だと、いまいち症状が分からないが……。

「多臓器不全は肺、心臓、肝臓、腎臓など重要な臓器のうち、2つ以上が機能不全に陥る症状のことです。2つの臓器を同時に手術することは困難で、1つの臓器を手術後、体力や免疫の低下によって他の臓器が悪化することがほとんど。多臓器不全を起こした人の生存確率は最大15%程度で、3つ以上だとほぼゼロです」(感染症専門医)

 その後の検査で、森氏の死因は、溶連菌という細菌が血液まで侵蝕しての敗血症と判明した。「溶連菌は本来、風邪のウイルスと同じ、ありふれた菌です。小学生の1割は、のどに溶連菌がいるという報告もあるくらいですからね」(医療ジャーナリスト)

 発症すると赤い発疹や発熱など扁桃腺炎の症状が出るが、抗生物質を飲めば比較的簡単に治る。だが、中には毒性が強く、感染後の増殖スピードが異常に速い「劇症型」もあり、これが血液に乗って全身に回ると、筋肉や皮膚、内臓で急速に増殖して臓器を機能不全にさせるのだ。森氏の命を奪ったのもこの劇症型だったことを、父親が葬儀の席で明かしている。

「敗血症になった場合、すぐに抗生物質を投与して、壊死した部分を切除するなど処置を行うのですが、進行スピードが早すぎて手遅れになることが多く、24時間で死亡したケースもあります」(前同)

 なんとも恐ろしい……しかし、このような外因以外にも、多臓器不全を引き起こす原因は数多い。循環器専門医の石蔵文信・大阪樟蔭女子大学教授は、「心臓が悪いと多臓器不全に陥る」ことがあると言う。「心臓の機能が低下すると臓器に十分な血液を送り出せなくなり、他の臓器の機能も低下。結果、多臓器不全を起こしやすくなってしまうのです」

 また、腸の血流や排泄が止まってしまう腸閉塞で壊死した組織から細菌が血液内に漏れ出て敗血症になる、肺水腫によって肺での血液の浄化がうまくいかなくなって多臓器不全に陥るなど、とにかく、あらゆることがきっかけになりうるのだ。「風邪のウイルス程度でも、抵抗力が下がった状態では危険です」(同)

 今年2月、アイドルグループ『私立恵比寿中学』の松野莉奈さんが体調を崩して救急搬送され、18歳の若さで亡くなった。後に死因は致死性不整脈と発表されたが、一時は急性心筋炎からの多臓器不全と報じられていた。このように、年齢にかかわらず、誰にでも起こりうるのだ。

「体調がおかしいと感じたら、軽く考えず、きちんと医師に診てもらうことが大切です」(同) 後悔先に立たず。体力に自信のある人ほど、わずかな体のサインに気を配ろう。

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