国会では森友学園問題が先に弾けるが、政権内では順序が逆。実は、福岡6区補選の前から、加計学園の獣医学部新設問題が懸案事項になっていたのだ。『総理のご意向』と書かれた文部科学省のメモには、麻生氏を名指しし、「獣医学部新設に強く反対している議員がいる中で、党の手続きをこなすためには(中略)少なくとも、衆院福岡6区を終えた後」まで待つべきだと記載されている。

 自民党・獣医師問題議員連盟会長である麻生氏は、蔵内氏(前出)が獣医師会の会長に就任した記念祝賀会で発起人を務める間柄。むろん、獣医師会は新設に反対の立場だ。さらに、例の文科省メモでは「自分(麻生氏のこと)は本件関係で総理から何もいわれていない。この話を持ち出されたこともない。だからもう(やらない方向で)決着したのだと思ってたくらいだ」という麻生氏の感想も綴られている。

「つまり、獣医学部新設問題で麻生氏は腫れ物のように扱われ、蚊帳の外に置かれていたということ。今年の春先からは、安倍首相が兄貴分の麻生氏に相談をする回数がめっきり減ったそうですが、これは、福岡の補選を機に両者の間に隙間風が吹き始めたからでしょう」(前出の事情通)

 そこに、森友学園問題が炸裂する。「森友学園の国有地払い下げ問題では、財務省理財局が迅速に認可するように大阪府へ圧力をかけたことが“忖度だ”と批判されました。財務省は、自分たちの不祥事をあえて外部に漏らしたわけです。これは、安倍首相を窮地に追い込みたいからに他なりません」(全国紙政治部デスク)

 佐川宣寿理財局長は、資料は破棄したの一点張りで野党の質問をかわし、その論功行賞で国税庁長官に抜擢されたが、「彼が守ろうとしたのは官邸ではなく、財務省」(前同)だったという。つまり、安倍政権への攻撃材料をリークしたものの、財務省まで国民の批判の矢面に立たされそうになったため、急いで幕引きを図ったというのが森友学園問題の真相だというのだ。

「安倍首相が財務省の強い怒りを買っているのは、消費増税を2回も延期したからです。その点、麻生氏は“官僚のイエスマン”として霞が関では有名で、官僚受けは抜群。財務省は、神輿に担ぐには麻生氏が適任と考えているんですよ」(財務官僚OB)

 こうした事情が曲解されてか、「森友・加計騒動の黒幕は麻生氏」という報道もみられるが、これは事実とは異なる。「麻生氏は、官僚たちの悪だくみを静観しているだけです。麻生さんの狙いは、第1次政権のときのように、安倍首相の体調が悪化したり、政権を投げ出さざるをえなくなった場合に禅譲を引き出そうとしているにすぎません」(前出のデスク)

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