この力を保持するために渡会氏が勧めるのが、ストローで飲み物を吸うトレーニングである。通常は、コップに口をつけて飲む人も、ストローを使って飲むことで、吸う力を鍛える=飲み込む力を鍛えることになるという。

 さらに、こんなトレーニングも有効だという。「息を止めて、ツバをゴックンと意識して飲む、あるいは、食事の際に意識してゴックンと飲むだけでもいいんです。意識することで、誤嚥を防ぐ飲み込み方につながります」 しかも、飲み込む力を鍛えることは、高齢者においては食事中の「窒息」による死亡事故防止にも役立つ。

 厚労省が公表するデータによれば、窒息事故死は9582人(13年)で、その8割以上が65歳以上の高齢者なのだ。この数は同年の交通事故死(5971人)より多いのである。ちなみに、飲み込む力が衰えると自然と食事の量が減り、認知症などさまざまな病気を呼び込みやすくなる危険性も。ノドのトレーニングは、そうした予防にも通じるという。

 続いて、肺の鍛え方だ。前出のチェック項目の後半5つは、肺機能(肺活量)の衰えに関するもの。特に肺活量の有無は、「たとえ、誤嚥しても、咳をして吐き出すことができるかどうかにつながる」(前出の岡田氏)というのだ。事実、高齢者が深呼吸を6か月続けることで、肺機能の向上が見られ、結果、誤嚥性肺炎の予防になるとの研究報告が出ているという。

 そこで本誌がお勧めしたいのが、風船を膨らますトレーニングである。何も難しいことはなく、風船を1日に1個、ただ膨らませるだけ。風船は100円ショップで購入することができる。さらに岡田氏は、「カラオケも悪くありません」と教えてくれた。中でも、高音を出さないといけない歌のほうが、より効果的だという。

 ただし、岡田氏が最も勧めるのは全身運動である。「少し早めの速度で歩き、汗ばむくらいのウォーキングは手軽でいいですね。もちろん、水泳もお勧め。こうした全身運動は、肺活量に加え、インナーマッスル(体幹筋)も自然と鍛えられますから、より効果的と言えるのです」

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