鈴川が話を続ける。「NEWは今年4月に旗揚げ戦を行いましたが、実は、自分はずっと、契約書に判子を押していなかったんです。違和感と不信感があって……。そんな状態でリングに上がっていたんです。それでも“猪木会長のため”と言われ頑張ってきたんですが、ファイトマネーを4分の1に値切られた選手もいたり、裏方や若手選手に食事の用意がなく、自分がコンビニ弁当を人数分、自腹で用意したこともあって。本当にエースだと思っているのか、と」

 エースとしての責任と会社への不信感の間で揺れ動いていた鈴川だが、退団の意思を固める。その直後の6月28日に行われたIGFフロントによる抜き打ち尿検査が、最後の決め手となった。

「あの日は、対戦カードの件で午前10時に会社に来てくれ、と言われていました。40分ほど待たされ、自分はトイレに行ったんですが、その直後に“尿検査をやってくれ”と言われたんです。拒否すると、“なんで受けないのか”と、出そうと500ミリの水を3~4本飲まされ、気持ちが悪くなって戻してしまった。それで、弁護士の中山雅雄先生に連絡したんです」

 鈴川は大相撲出身で、若麒麟の四股名で活躍し、最高位は幕内9枚目。だが、09年に薬物を所持していたとして現行犯逮捕され、現役引退。執行猶予つき有罪判決を受け、10年にIGFに入団した経緯がある。そのため、不定期で抜き打ち尿検査を行ってきた、というのがIGFの主張だ。

 中山弁護士が言う。「大量の水を飲み、嘔吐するような状態だったのに、応じなければ解雇すると強制された尿検査は、人権侵害の疑いが濃厚です。当初、IGFは公式HPで、鈴川選手の退団を“笑顔で送り出したい”と円満退社を強調していた。しかし、彼が猪木会長に会ったと分かると、一転して“任意の尿検査を拒否した”と発表した。鈴川選手にダーティーな印象を与えようとする悪意は明白で、名誉毀損に該当しうるものです」

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