一方で白鵬は、モンゴル国籍のままでも圧倒的な結果を残してきた自分なら特例的に一代年寄が認められるだろうと考え、幕内・石浦、十両・山口、序二段・炎鵬の3人を内弟子にして“アピール”していたが、「八角理事長以下、改革派の貴乃花親方も含め、“日本国籍がない者には年寄株の取得を認めない”というのが日本相撲協会の一貫した姿勢。例外なんて言葉は一切出ませんでした」(同)

 そんな折、モンゴル在住の母・タミルさんの後押しが契機となったという。「タミルさんは通算最多勝を更新した一番を観戦したうえで、“お世話になった日本で相撲に恩返ししなさい。それが、あなたの運命だから”と息子に伝えたんです」(同)

 この決断を“チャンス”と捉えているのが、先に協会関係者が述べた貴乃花親方だ。白鵬の直接的な言い方に対して横綱らしからぬと、これまでは批判的だったが、一方で、「親方となればそれがプラスになると考えている」(専門誌記者)という。

「伝統は守りながらも正すべきは正すという改革を標榜しながらも、動きを封じられている貴乃花親方にとって、現状は忸怩たる思いでしょう。しかし、協会のあり方について問題提起することもある白鵬は、同志と言うべき存在。それに、あれだけの実績を残した横綱とタッグを組めば、発言力が増すのは必定。旧体制を打破できると期待しているようです」(専門誌記者)

 昨年3月に行われた相撲協会の理事長選で八角理事長に挑み、6票対2票で敗れた貴乃花親方。その際、「理事長選に出馬するのはこれが最初で最後。今は、すがすがしい気持ちです」と敗戦の弁を語っていたが、「あれで終わる気持ちはさらさらない。近い将来、理事長選で勝利し、盤石の体制を築くために、白鵬を取り込む作戦に転換したようです」(前出の専門誌記者)

 実は白鵬も、その気持ちに応えようとしている。今年2月、貴乃花は貴乃花部屋の大阪場所宿舎である京都・龍神総宮社の豆まきに参加したのだが、そこに白鵬も駆けつけたのだ。

 翌3月、落語家・桂文福のトークショーに参加した貴乃花は、モンゴル国籍のまま親方になろうとする白鵬を“それは難儀なんじゃないでしょうか”として、例外は認めない考えを改めて示したが、「一部では当時から、貴乃花からの“早く決断して一緒にやろう!”というエールだったと言われていた」(前同)のだ。

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