バイオハザードに幻の「2」があった!? “発売中止”のプレステゲーム特集の画像
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 総数にして3290本もリリースされた初代プレイステーションのゲームだが、その陰には、開発に入ったものの様々な理由で発売中止となった作品がある。現在発売中のガイドブック『懐かしのプレイステーションコンプリートブック 語ろう! 僕たちの初代プレステ』(メディアックス)の中で、『幻の未発売ゲームを追え!』(徳間書店)の著者である天野譲二氏が、発売中止となったプレステゲームを解説。ここでは、その幻のソフトについて触れて紹介していきたい。

 

あのバイオハザードに幻の「2」があった!

 そもそもゲームは商品であり、企画→検討→採用→開発→プレスというプロセスを経て、初めて世に送り出されるが、店頭に並ぶ前に数々のゲームの企画がボツになっているのも事実である。

 プレステの場合、他のハードにありがちな、小さい市場では商売にならないと判断されて中止になる可能性が少なかった。反面、参入メーカーの数が増えれば企画の数も増えて、潰れる企画も増えてしまうわけだが……。

 1990年代の次世代ゲーム機戦争でトップに躍り出たプレステは、様々なヒット作・話題作を送り出しながら、その陰で数多くのゲームを発売中止にしている。その代表的な作品といえば、プレステ生まれで、今なお続く人気作となったカプコンの『バイオハザード』シリーズの『バイオハザード2』である。

「え? 2は発売されたでしょ?」と驚いた方もいると思うが、皆さんご存知の『バイオハザード2』以前、『バイオハザード』が発売された直後、開発が開始された別の『バイオハザード2』があったのである。これは警察署の最上階から脱出を図る警官レオンとバイクで警察署の1階に辿り着いた女子大生エルザの二人を主役にしたストーリーで、各種メディアでも期待と共に紹介されていたが、1997年3月の発売を目標にしながら、クオリティの面から開発中止となり、改めて開発され市販されたものが、現在われわれがプレイすることのできる『バイオハザード2』だ。そのため、この発売中止バージョンは『バイオハザード1・5』と呼ばれ、ムービーのみが『バイオハザード ディレクターズカット デュアルショックVer.』に収録されている。

 ファミコンとスーパーファミコンでスマッシュヒットを飛ばした戦車RPG『メタルマックス』シリーズも、当初はプレステで『メタルマックス3』を出す予定だったが、こちらも諸事情で開発中止になった。ちなみに、その後ニンテンドーDSで出た『メタルマックス3』とはまったく別内容である。

 これらは現在もシリーズが続いているが、シリーズ自体が消えてしまったものもある。ビングの『バックガイナー』シリーズである。これはアニメ―ションをふんだんに取り入れたシミュレーションゲームで、主人公が女性隊員たちと人型兵器を駆使して謎の怪物たちと戦うという、『サクラ大戦』や『ゲートキーパーズ』のような内容のゲームである。1998年に3部作の第1弾として『覚醒編』、第2弾として『飛翔編』が発売されたが、肝心の『完結編』が発売されないまま終了してしまった。まったく姿を現さなかったゲームならともかく、途中まで発売して完結編だけお預けで未完のままというのは、ファンからすればあんまりな話である。

 プレステの時代、1990年代後半はこういったアニメや美少女(+声優)を売りにしたゲームが目白押しだった。『ときめきメモリアル』をヒットさせたコナミでさえ『青山ラブストーリーズ』という青山を舞台にしたトレンディドラマライクな作品をフェードアウトさせているが、『センチメンタル グラフティ』で一世を風靡したマーカスは『EARLY REINS(アーリーレインズ)~荒野の天使たち~』という西部劇ギャルゲーをお蔵入りにしている。これは最初にバンプレスト、後にアトラスから発売される予定で、サンシャイン・ヒルに赴任した保安官助手が金持ちの娘や、牧場主の娘、女医、少女保安官、ネイティブアメリカンなどのヒロインたちと交流しながら西部の悪と戦うという作品だった。『グランディアII』などで知られる「かのえゆうし」氏による魅力的なキャラクターが設定され、一部グッズなどの商品化などは進められていたものの、作品自体はマーカスと共に消滅した。ただしメディアミックスのアニメ企画だけは進められ、後年OVAのみが発売されるという、珍しい流転の運命をたどっている。

 ギャルゲーといえばもう一本、バンダイ『時をかける少女』である。筒井康隆のジュブナイル小説……というよりは、原田知世主演の映画やアニメ映画で今も人気の高い作品を題材にしたアドベンチャーゲームで、キャラクターデザインは『まもって守護月天!』などで知られる桜野みねね氏。四つの時代の鎌倉を舞台にして、タイムリープの能力を持ったヒロインが歴史の改変を修正しながら謎を追うというストーリーで、1998年夏の発売を目標にデモムービーなども発表されていたが、その後の進捗はなく、お蔵入りとなった。

 これらの作品は発売中止とともにその全貌が闇に消えてしまった作品群である。アーケードゲームや他ハードからの移植が中止されたような作品は、一応世に出ていてプレステでプレイできないというだけなので取り上げないが、最後に一本だけそれに該当するタイトルを紹介しよう。

 1990年代に『Dの食卓』で一躍脚光を浴び、“ゲーム業界の風雲児”として一世を風靡したワープの飯野賢治氏は、その次回作が注目されていた。そして、その次回作『エネミー・ゼロ』は、1996年3月27日に行われた、プレイステーションの新作などを発表する一大イベント「プレイステーションエキスポ」で発表された。ただしその頃、SCEと対立を深めていた飯野氏は、デモンストレーションで、プレイステーションのロゴがセガサターンに変化する映像とともに、『エネミー・ゼロ』をセガサターンで発売するとし、プレイステーション版を2080年に発売すると発表したのである。

 残念ながら、飯野氏は42歳という若さで他界したが、プレイステーション版ゲーム最大の発売中止・未発売ソフトは『エネミー・ゼロ』とあると断言してもいいだろう。おそらく未発売ゲーム大好きな筆者でもその行く末を見届けることはできないと思うので、読者の中でどなたか奇特な方がいらしたら、発売されるかどうかを確認していただきたい。え? 最後にそんなタイトルを紹介するなって? 苦情はセガサターン好きの筆者にプレステ記事の執筆を依頼した編集部にお願いいたします(遁走)。

文・天野譲二(TOKYO−MEGAFORCE)

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