野球バカ一代の甲子園「歴史的1日」観戦記【中編】の画像
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 高校野球ファン歴30年の“野球バカ記者”が、歴史に残る“歴史的な一日”を生観戦した興奮のレポート第2回。

「野球バカ一代の甲子園『歴史的1日』観戦記【前編】」(https://taishu.jp/detail/29209/)から読む!

 広陵―中京大中京。ともに好投手、強打をそろえる優勝候補同士の対決だ。中京大中京の先発は背番号10の磯村峻平投手。広陵は平元銀次郎投手。サウスポー同士の投げ合いは、非常に見応えがあった。磯村投手は速球でグイグイ押す。外野席からでも、キレが抜群であることが分かる。一方の平元投手は変化球を低めに丁寧に集める。

 試合が動いたのは3回裏。中京大中京の1番伊藤康祐選手がバックスクリーンにホームランを放ったのだ。これが甲子園で見る初ホームラン。それにしても、バックスクリーンのホームランなんて、昔はほとんど見なかったよなぁ。

 この回、中京大中京はさらに1点を追加。2‐0とした。その後は両投手が踏んばり5回を終える。気づけば太陽が顔を出している。試合が動いたのは6回表。磯村投手が先頭打者を打ち取ったところで、中京大中京は投手をエースの香村篤史選手にスイッチ。打席には前の打席でヒットを放っていた“あの”中村奨成選手だったので、早めに判断したのだろう。

 代わった香村投手の速球は軽く140kmを超える。ただ、中村選手もこれについていき、簡単には空振りしない。そして6球目。高めのストレートを叩くと、ライナー性の打球は右中間スタンドに放り込まれたのだった。一番深いところに放り込むとは……。

 流れは一気に広陵に傾く。香村選手から連打で追いつくと、中京大中京は3人目の伊藤稜投手に交代。 それでも広陵の勢いは止まらず逆転。継投は難しい。7回には広陵の2番佐藤勇治選手がホームラン。8回には中村選手がこの日2本目のホームランを放り込んだ。この中村選手、打つのもすごいが、守りもすごい。送りバントの処理、二塁への送球は高校生レベルじゃない。

 試合は広陵が10‐3とリードしながら9回裏に。一死から中京大中京が粘る。山本雅也投手から代わった広陵の森悠祐投手の速球を打ち、1点を返す。一死満塁となり、広陵ベンチは山本選手を再びマウンドに送るが、勢いは止まらない。押し出しとタイムリーで2点を追加。甲子園がザワザワし始めるが、やはり点差が開きすぎた。最後は、10‐6で広陵が勝利を収めたのだった。

 広陵は次の塁への意識が高く、隙のない野球をしていた。愛知県出身のSさんは、中京大中京を応援していたが、試合後は「広陵、強いね」と満足げな様子。敗れた中京大中京も個々の能力が非常に高く、もし1回戦を勝っていたら……と思わせる内容だった。

 さあ、いよいよ2試合目。横浜―秀岳館だ。帰る人はゼロ。外野席も入場規制がかかる。ライト側から入場した人は、そのまま通路を進み、レフト側から退場していく。「観ることがかなわなかった人たちに、少しでも雰囲気を味わってもらいたいから」という粋な計らいだったそうだ。

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