国内外問わず熱狂的なファンが多いアニメ『ドラゴンボール』シリーズ(フジテレビ系)。しかし鳥山明氏の原作漫画に比べ、アニメ版では物語の“水増し”が多いことでも有名だ。
引き伸ばしで特に有名なのは、アニメ『ドラゴンボールZ』。その手法は、たとえば悟空とピッコロが運転免許を取りに行くといったオリジナルエピソードを挟んだり、長時間かけて気を溜めたり、キャラクターのリアクションや回想で水増ししたりとさまざま。またアニメの冒頭で流れる“前回のあらすじ”で尺を稼ぐ方法も有名だ。
しかし『ドラゴンボールZ』の引き伸ばしは、放送当時の事情を考えると苦肉の策だったといえるだろう。同シリーズの物語は、当時連載中だった原作漫画とほぼ平行して進行。途中アニメの展開が原作漫画の最新話を追い越しそうになってしまうことも。そのためファンの中には、『ドラゴンボールZ』の引き伸ばしを“やむを得ない手段”と見る人も多い。
そんな同アニメの中でも、ファンの間で“宇宙一長い5分”と語り継がれているエピソードがある。それはナメック星を舞台にした孫悟空とフリーザによるバトルのラストの出来事。まず第97回「ナメック星消滅か!? 大地を貫く魔の閃光」で、悟空の猛攻に屈辱を味わったフリーザはナメック星もろとも悟空を消し飛ばすことを決意。「貴様なんかに殺されるくらいなら、自らの死を選ぶぞ」と言い、ゆっくりと気を溜め、赤い閃光を放った。
星を消し去るような攻撃だったのだが、フリーザは自分が爆破に巻き込まれるのを恐れてパワーを抑えすぎてしまう。その結果一瞬で星が消滅することは避けられたのだが、中枢が完全に破壊されてしまっており、フリーザは星が消滅するまで“あと5分”と告げる。
しかしこの5分間がやたらと長く、ナメック星が爆発したのは、なんと9話後の第106話「ナメック星大爆発!! 宇宙に消えた悟空」でのことだった。つまり悟空とフリーザは2か月以上に渡って“5分間”の戦いを繰り広げていたのだ。
また第36話から第107話まで、およそ1年半に渡って描かれたエピソード「ナメック星編」。一方で作中世界の経過時間は、地球からナメック星までの所要時間6日と滞在時間が1日だということを計算すると、実はわずか1週間だったという説もある。
これほどの水増しがされていながら、視聴者をテレビの前に釘づけにした『ドラゴンボール』。偉大な作品は演出も大胆だ。