「チーム6はDEVGRU(海軍特殊戦開発グループ)とも呼ばれ、SEALsから独立しています。ビンラディン氏の殺害作戦では、米陸軍の第160特殊作戦航空連隊ナイトストーカーズがヘリコプターの運用を支援していますので、おそらく、この部隊も投入されると思われます。さらに、金正恩氏の護衛戦力が大きい場合には、対戦車ミサイルなどの高い火力を持つ第75レンジャー大隊の投入も予想されます。いずれにせよ、斬首作戦は、米軍の特殊作戦コマンドの総力を挙げた作戦になるはずです」(竹内氏)
■ハリウッド映画のようにはいかない
実力、経験、装備いずれも世界最高レベルにある米軍の特殊部隊。彼らに、韓国で誕生する斬首部隊が協力して、金正恩氏ら北朝鮮首脳を一気に葬り去る――。ところが、斬首作戦は我々が想像するほど簡単なものではないという。「ハリウッド映画のようにはいかないでしょうね。SEALsなどの特殊部隊が戦果を挙げたのは、ビンラディン氏殺害やタリバン掃討といった対ゲリラ戦闘が中心です。一方、北朝鮮は国家であり、強固な防衛基盤もあるため、作戦は非常に困難なものになるはずです」(陸自OB)
そのため、大規模な戦闘を嫌い、隠密裏に斬首作戦を実施するにしても、海空軍による最低限の火力支援は不可欠になるという。「北朝鮮には日米韓への反撃手段があります。ですから、特殊部隊を投入する前に、B-2ステルス爆撃機による空爆や、イージス艦などから発射される巡航ミサイルにより、弾道ミサイルの発射施設や火砲、ロケット砲をできる限り潰しておく必要があります。また、空路で特殊部隊を送り込むのに障害となる地対空ミサイル基地や、進出地域に展開する部隊なども叩いておく必要がありますね」(竹内氏)
弾道ミサイルや各種火器以外にも、北朝鮮特殊部隊による反撃も覚悟しなければならない。『コリア・レポート』の辺真一編集長は、こう指摘する。「総兵力は8万人と大規模です。今年4月の軍事パレードを見る限り、北朝鮮の特殊部隊は米韓軍に遜色のない装備で武装しています。また、米統合参謀本部議長は米議会で、北朝鮮の軍事力は特殊部隊も含めて世界第4位だと発言したこともあります。となれば、斬首作戦は、世界第1位と4位の戦いということになる。相撲で言えば横綱と小結の戦い。容易な相手ではないということですよ。特に手強いのが、矯導隊指導局。ここは、特殊部隊の戦力を強化するため、91年に総参謀部直属の部隊として発足し、5万人の巨大兵力を有する最精鋭部隊です」