綾小路きみまろ「具合が悪くなるまで、とことんしゃべり続けたい」しゃべり続ける人間力の画像
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 芸人になりたいと思ったのは高校生の時です。テレビでいつも観ていた司会者の玉置宏さんに憧れましてね。当時は録音機器がないからノートに書いて、よくマネしていましたよ。「1週間のご無沙汰でした。玉置宏でございます」って(笑)。その憧れだけで何のアテもなく、高校卒業後に東京に出てきたんです。今考えると、計画性がないというか世間知らずというか、なんか恐ろしいですよね。だから遠回りしてしまったのか、メジャーデビューまで時間がかかったんです。

■森進一、小林幸子、伍代夏子から声が掛かり…

 私は「潜伏期間30年」と呼んでますけど、20歳の時キャバレーの司会を始めました。その場その場で一生懸命やっていたらスカウトが来てね、どんどん大きなキャバレーに移っていった。そんな中、森進一さんや小林幸子さん、伍代夏子さんから声が掛かり、コンサートの専属司会者も長く務めました。つまり、すべて他力本願だったんですけど、30年の間で辞めようと思ったことはないですね。だって故郷を捨てて出てきたんですから、死ぬまでやろうと。特に漫談をやり始めてからは、私の漫談をわかってくれる人が必ずいると信じていましたね。

 とにかく世に出たかった。それが当時のモチベーションにもなっていました。周囲でも結構噂にはなっていたんですよ、「あんなに漫談がすごいのに、何で売れないんだろう」って。それで50歳の時、多くの人たちに私を知ってもらうために、自分の漫談を録音したカセットテープを配ることにしたんですよ。

■高速道路のサービスエリアで運転手やバスガイドに無料配布

 では、どこで配るか。私のネタは中高年をモチーフにしているので老人ホームも考えたんですけど、老人ホームは耳が遠い人が多いだろうからダメかなと(笑)。そこで閃いたのが、中高年向けの観光バス。移動中、乗客が暇を持て余しているときにテープを掛けてくれたら聴いてくれるんじゃないかと思ってね。ダビングした大量のテープを紙袋に入れて、高速道路のサービスエリアに持って行っては、運転手さんやバスガイドさんに無料で配り続けました。

 テープには「1本、郵送料込みで2000円です。欲しい方はこちらに連絡ください」と書いておいたんですけど、そしたら徐々に話題になって、注文が来るようになったんですよ。最初は1日3本程度だったのが、10本になり50本になり、最高は400本! 発送は妻が担当していたんですけど、さすがに自主制作では対応できなくなった。

■CD版はオリコンで最高3位に!

 そんな時、レコード会社のテイチクさんから声を掛けてもらい、2002年9月、アルバム『爆笑スーパーライブ第1集!中高年に愛をこめて…』のCD版とカセット版が発売になりました。CD版はね、オリコンで最高3位まで行きましたよ。累計では180万枚売れています。おかげで52歳でブレイクして生活も一変しましたけど、特に浮かれることはなかったですね。それまでいろんな芸能人の姿を見てきてますから。みんな、大金が入ってくると使っちゃうんですよ。でも翌年には税金の支払いがやってくる。だから、急に車とか船を買ったりはしなかったですね(笑)。

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