ボールを「持つ」ことと「持たされる」ことは似て非なる。両方合わせてポゼッション(ボール支配率)というのなら、その有効性については疑ってかかった方がいい。そこを指揮官が突いた。さる9月28日、親善試合に臨む日本代表メンバー発表の席でヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、こう力説した。「日本のサッカーの教育は“ポゼッション”をベースにつくられていると感じた。もちろん、点を取るためには、ボールが必要で、ボールを持つことが“ポゼッション”だ。だが、相手よりボールを持ったからといって勝てるわけではない」

 そしてホワイトボードにスラスラと数字を書き込んだ。パリSG37.6%、バイエルンM62.4%。欧州チャンピオンズリーグ1次リーグの試合を引き合いに出し、ポゼッション偏重の無意味さを説いたのだ。結果は3対0。勝ったのは3分の1強しかボールを支配できなかったパリSGの方だった。

■リアクションサッカーこそ、日本代表が採るべき戦法

 指揮官がこのデータを誇らし気に紹介したのには理由がある。6大会連続6度目のW杯出場を決めたホームでのオーストラリア戦、日本は33.5%とオーストラリアの3分の1の支配率ながら2対0で完勝した。リアクションサッカーこそが日本の採るべき戦法だと強調したかったのだろう。

■ブラジルワールドカップで決勝トーナメントに進出

 ハリルホジッチには成功体験がある。前回のブラジルW杯、指揮を執るアルジェリアはアウトサイダーながら決勝トーナメントに進出した。ボール支配率42.6%はW杯に出場した32カ国・地域の中で下から3番目だった。

 代表監督は結果が全てである。指揮官は「サッカーは不確実な科学。唯一の真実は結果です」とも語った。その通りだろう。一方で「リアクションサッカーは短期間のトーナメントには有効だが、その国のサッカーの底上げにはならない。今のアルジェリアの姿を見れば明らか」(協会関係者)との冷めた声も。ポゼッション論争は、しばらく続きそうだ。

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