崩壊寸前「橋とトンネル」日本全国激ヤバ実態の画像
崩壊寸前「橋とトンネル」日本全国激ヤバ実態の画像

 建設ラッシュから50年を経た80年代の米国では次々と道路が崩落した。今、日本がその難題に直面している。

■国土交通省が道路の老朽化に警告

〈今や、危機のレベルは高進し、危険水域に達している。ある日突然、橋が落ち、犠牲者が発生し、経済社会が大きな打撃を受ける…そのような事態はいつ起こっても不思議ではない〉 これは、決して怪文書ではない。国土交通省の専門部会が2013年にまとめた『道路の老朽化対策の本格実施に関する提言』の1ページ目に書かれた警告なのだ。

 そして、この危機の一部が明らかにされた。同省は、9月12日までに、14~16年度に実施した全国の橋やトンネルの「老朽化点検」の結果を公表したのだが、4段階評価で最悪のレベル4「緊急措置を講ずべき状態」と判定された橋が全国に396か所、トンネルが27か所という衝撃の結果だったのだ。「崩落の恐れがあるとして、すでに423か所すべてで通行止めなどの措置が取られています」(全国紙記者)

 今回の点検は、12年12月に発生した中央道・笹子トンネル(山梨県)の天井板崩落事故を受けて行われた。9人が死亡した惨事を再び招かないよう、14年7月から橋とトンネルの5年に1度の点検が義務化されたわけだが、これにより驚愕の事実が明らかになった。交通ジャーナリストの村松虎太郎氏は、こう警鐘を鳴らす。「この点検は目視が基準のため、“確実”とは言い切れません。それに、昨年度までの点検実施率は橋で約54%、トンネルで約47%。1巡目の点検を終えるのが18年度とされており、その間、我々はリスクにさらされていることになります。事実、点検前の13年の時点で、全国で2000もの橋が老朽化により通行禁止・規制となっていますからね」

 緊急措置の直前、「早期に措置を講ずるべき」というレベル3判定を受けた橋は全国に4万2042か所、トンネルが2277か所あるという。その多くが今も日常的に利用されているのだから、笹子トンネル事故の再来の懸念は当然だ。公共政策が専門の東洋大学教授・根本祐二氏は、こう指摘する。「橋やトンネルの全体が同時に壊れなくても、部品が壊れただけでも危険です。笹子トンネル事故も、天井板を支えていた金属ボルトの劣化が原因で、あの惨事を招きましたから」(前同)

■危険な状況になったそのヒントはアメリカにある

 老朽化や劣化を原因とする全国に知られた大事故は、今のところ笹子トンネル事故のみではあるが、どうしてこのような状況になったのか。そのヒントが実はアメリカにある。1967年12月、ウエストバージニア州とオハイオ州を結ぶシルバー橋が突如崩壊し、46人が犠牲になった。しかも、この事故は悲劇の序章に過ぎず、80年代に入ると、米国各地で橋やトンネルの“構造物”が相次いで崩落したのだ。「米国では、20年代から30年代にかけて急速に道路整備が進みました。構造物の耐用年数は50年とされており、建設から50年後に見事に崩壊していったんです。これは、“崩壊する米国”と呼ばれる社会問題に。シルバー橋も建設から40年強での落橋でした」(前出の村松氏)

 日本の道路整備が進んだのは60~70年代の高度経済成長期。つまり今、建設ラッシュから50年という“危険時期”なのである。前出の根本氏は、「アメリカのような事態は日本でも当然起こります。我が国のインフラが今まであまり壊れなかったのは、“日本人が作ったから”ではなく、壊れるほど古くなかっただけ。老朽化が進めば当然、崩壊します」

 笹子トンネル事故は、建設から35年を経て発生した。日本の安全神話も時間の前では絶対ではないのだ。「現在、全国の橋の約30%は建設から40年以上が経過。さらに、50年を超える橋とトンネルは全体の20%を超え、2045年には橋の7割近く、トンネルの半数以上が50年を迎えます」(前出の全国紙記者)

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