亀井静香氏「最後の“昭和”政治家」38年の政治人生に幕の画像
亀井静香氏「最後の“昭和”政治家」38年の政治人生に幕の画像

「仁義なき戦いをして当選しても、そういう政治家は信用されない」 10月5日、こう言って38年にわたる政治家人生に幕を下ろしたのが、亀井静香元金融相(80)だ。その経歴は波瀾万丈。東大を卒業して警察庁に入庁しながらも、1979年に自民党に“ゲソをつける”と衆議院議員としてメキメキと頭角を現し、運輸相を手始めに、建設相、金融担当相と要職を歴任した。

■小泉純一郎首相と郵政民営化で激しく対立

 さらに、重要局面で常に名前が出てくる抜群の存在感で、特に小泉純一郎政権下での“郵政バトル”では注目を集めた。小泉元首相と亀井氏は郵政民営化を巡って激しく対立。亀井氏は自分の政策が受け入れられないと判断するや、2005年に自民党を離党して選挙戦に挑んでいる。「小泉氏と亀井氏は仲が良かったんですが、それはそれ。どんな相手でも、自分の意志は絶対に曲げないという“武闘派”亀井の面目躍如でしたね」(政治記者)

 郵政をめぐる対立は根深く、後年、亀井氏は「頭にくるって言ったって、ぶっ殺すわけにいかん」と吐き捨てている。頑固一徹で武闘派を貫く姿勢は議員になる前からのもので、警察官時代には、埼玉県内の居酒屋で客がチンピラ3人に囲まれているのを見るや、合気道の達人である彼は、その3人を素手で、たちまち叩きのめしたという。

■石原慎太郎元都知事を、高速道路で置き去りに

 ポン友である石原慎太郎元都知事とのエピソードも面白い。「高速道路を走っていたときのことです。いつしか2人の間で政策論争が始まり、やがて口論に。しまいには亀井さんが石原さんを車外に出して、置き去りにしたという話を聞きました」(自民党関係者)

 舌鋒も鋭かった。「日本の政治史において、政策で政権取った例があるか? ないよ! 政策論争なんて一生懸命やっても、選挙には何の役にも立たない」「有権者がアホだからアホな政治家しか出てこない」「トランプ(大統領)に対して花札で勝負をしたい。ヤンキー魂に対して私たちは大和魂でやって参ります」――ビートたけしも顔負けの切れ味なのだ。

■酒好きで喧嘩っ早くて情に厚く、頑固一徹

 一方で、他人を虜にするカリスマ性を持っていた。国会議員の現役政策秘書で『国会女子の忖度日記』(徳間書店)の著書もある神澤志万氏は、その人心掌握術の一端をこう回顧する。「たとえ1000円のご寄付であっても、その寄付してくれた本人に自ら電話してお礼するのが亀井氏です。相手がもし電話に出なくても、しっかり留守電に残す。地元のおばあちゃんで、その留守電を消去せずに大事に残している方を知っていますよ」

 コミュニケーション力は、酒席でも発揮され、「亀井先生とのお酒は本当に楽しくて、先生を好きな女性秘書は大勢います。お酒が入ると特に饒舌になるのが下ネタ。他の男性ならセクハラになる発言も、亀井先生が言うと面白い冗談になるんです」

 “昭和の政治家”の代名詞である“料亭”をこよなく愛したことでも知られる。「東京・赤坂にある行きつけの料亭には1年で300万円以上も政治資金をつぎ込んだほどで、料亭で多くの会合を重ねました。密室での“寝技”も得意で、闇社会の大物・許永中との200億円詐欺事件でも名前が挙がりましたしね。喧嘩っ早くて情に厚く、頑固一徹……。かつての三木武吉のような義侠心を持った最後の昭和の政治家でしたね」(前出の記者)

 昭和は遠くなりにけり。

本日の新着記事を読む