女性記者が過労死、NHKの「過酷な労働環境」を元記者が激白の画像
女性記者が過労死、NHKの「過酷な労働環境」を元記者が激白の画像

 “みなさまの公共放送”で発覚した、過酷な労働環境。巨悪を追う一方で自らが追い込まれる悲惨な現実が!

■電通の過労自殺事件を詳しく報道していたNHK

 10月6日、電通の新入社員だった高橋まつりさんの過労自殺をめぐり、労働基準法違反で、同社に50万円の有罪判決が下された。「裁判前から電通の過労自殺事件を詳しく報道していたのはNHKでしたが、まさか同様の事件が起きていたとは……」(全国紙社会部記者)

 2013年7月、当時31歳のNHK女性記者・佐戸未和さんが、過労による心不全で亡くなっていたのだ。翌14年4月には労災認定されたが、それを公表したのは今年の10月4日。「佐戸さんは東京・渋谷の首都圏放送センターに勤務し、主に東京都政の取材を担当していました。時間外労働は月159時間にも上ったそうです」(前同)

●自らがブラック企業だった内情

 そんな実態を局内で黙認する一方、看板報道番組『クローズアップ現代+』では、長時間労働を頻繁に特集。「佐戸記者が亡くなった13年にも、同番組では『拡大する“ブラック企業”』と題し、問題を追及していましたが、自らがブラックだったわけですよ」(同)

 10月6日午前、上田良一NHK会長は佐戸さんの両親宅を訪問し、謝罪。だが、過労死と認定された当時、会長を務めていた籾井勝人氏は、これまで謝罪していない。

「彼女の名前までは知りませんでしたが、記者の過労死は、局内では有名な話でした」 こう語るのは、NHKで記者職をしていたA氏。「電通を見て、うちでも組織的に、何らかの対策を取らねばならないだろうという話は出ました」

 電通に強制捜査が入ったのは昨年の11月。「昨年末頃から労働組合で、記者の過労死問題が議題に上がり、働き方改革をしなきゃ、まずいという話になりました」(前同)

 この時点で、佐戸記者の死から3年以上が経過。遅きに失した感は否めない。この件の公表、謝罪の遅さと、電通の過労自殺との関連について、NHKに問い合わせると、広報局は次のように回答した。「二度と同じようなことを起こさないという決意を組織内で共有し、改革の徹底を図るために、NHKで発生した過労死の事実を全職員に伝え、外部に公表することが必要だと判断しました。ご両親の代理人からは当初から一貫して『公表を望んでいない』と聞いていました」

■残業は100時間が“前提”

 現場でも、働き方の改善は模索されているという。前出のA氏が続ける。「今年に入ると、各支局、月1で労働組合で議論していました。新人には絶対、週2日休みを取らせないといけないとか。今は、みなし残業が100時間入っている働き方なんですが、それを変える必要があるとか」

 月80時間以上の残業が“過労死ライン”とされているが、残業100時間が“前提”とは驚くばかり。NHK広報局は、「みなし残業100時間という事実はありません」とし、「記者に対しては、今年4月から健康確保を以前よりも重視した、新たな勤務制度を導入するとともに、長時間労働の抑制に努めています」と回答するが、構造的な問題は残る。

●歯医者に行く時間もない

「原則、記者職で入社した人は一生、記者。現場で働きたい人ばかりなので、出世しても、人事労務に興味がありません。部下の労働時間の把握や、管理のできない上司はかなりいます。3日連続、車内やイスで数十分、仮眠しただけということもザラ。私は入局後、2年で4本も、歯がダメになりましたよ。歯医者に行く時間もなくて。大学卒業まで1本も虫歯がなかったのに」(A氏)

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