■選挙のときは仕事量が激増

 さらに、忙しさに追い打ちをかけるのが選挙。別の元NHK記者はこう語る。「基本的に選挙が始まると、記者は総出で担当。警察担当、役所担当など自分の持ち場に加え、選挙関連の仕事も掛け持ちするので、仕事量が激増するんです」

 佐戸記者が亡くなった13年は、6月に都議選、7月に参院選が行われた。心不全となったのは参院選投開票日の3日後の7月24日で、死亡直前の1か月間の休日はわずか2日だった。「選挙報道は地道な作業。選挙本部の集計発表を待つと遅いので、投票所に行き、2人体制で票数をカウントしたりする。しかも公共放送ですから、数字の間違いは許されません」(前同)

■精神的ストレスは相当なもの

 また、NHK記者の過酷ぶりに驚く他社の記者も多い。夕刊紙記者はこう語る。「お互い情報交換をし合うこともあるんですが、メモを取りながら、うつらうつら。夜に会食した際は、さっきまでしゃべっていたのに突然、寝落ち。そのまま1時間寝ていました。30歳手前で、すっかりハゲている人もいますし……」

 また、精神的ストレスは相当なもの。ある中堅NHK記者は語る。「放送日という締切のあるディレクターと違い、記者はネタを見つけねばというプレッシャーが毎日続く。出世競争も激しい。東京でのポストは少ないので、地方からずっと上がれない人も多くいます。地方で地元の小学校や老人会の運動会を取材していると、東京の奴は今頃、何を取材しているんだろうと、焦る気持ちはあります」

■転勤にまつわる悩みは尽きない

 全国に54の放送局を持つNHKだけに、転勤にまつわる悩みは尽きない。「2週間前に突然、赴任地を告げられることもしょっちゅう。異動までに、その地域を勉強しなくちゃならないので、社内異動の噂には皆、敏感です。鳥取転勤の噂を聞き、日本海新聞を読み込んでいたら、本当は福岡だったなんてことも(笑)」(前同)

 熱心な仕事ぶりには頭が下がるが、くれぐれも命だけは大切にしてほしい。

本日の新着記事を読む

  1. 1
  2. 2