降りしきる雨の京都で行われた牝馬三冠の最後の一つ、秋華賞は、馬場への適性が勝負の分かれ目になってしまいました。この日の京都の馬場は、午前中は良の発表。午後から稍重に変わり、レースが行われる頃には芝に水が浮き、泥んこ馬場に近い状態に。前を走る馬の跳ね上げた泥の塊が、容赦なく顔めがけて飛んできます。騎手なら、みんな経験がありますが、その衝撃と痛みはかなりのものです。それでも目は、ずっと開けたまま。思わず目をつむったゼロコンマ何秒かの間に、勝負が決まってしまうことだってありますから、一瞬たりとも気を抜くことはできません。

■欲しいのはただ一つ、G1のタイトル!

 でも、しかし、そんなことにかまってはいられません。欲しいのはただ一つ、G1のタイトルです。桜花賞2着。オークス5着。牝馬三冠レースをともに戦ってきたパートナー、リスグラシューに大きな勲章をプレゼントしたい――どう乗ったら、それがかなうのか。この日の僕は、ただ、それだけに神経を集中させていました。

 スタートは……やや出負け気味。でも、それは想定内でした。そこからじわりと前に進出し、前半は内でじっと我慢。向こう正面で外に持ち出し、3コーナーから勢いをつけて前に進出したときは、――勝った。そう思ったほど、思い描いていた理想的なカタチに持ち込んでいました。

 それでも結果は、ディアドラに、あ然とするほど鮮やかに差し切られ、悔しい2着……。最後に勝敗を分けたのは、ディアドラが父ハービンジャーから受け継いだ血……馬場適性が高く、タフさとしぶとさを併せ持っていたということです。う~ん。それにしても、悔しいですね。

■天皇賞・秋のパートナーは北島三郎の愛馬キタサンブラック

 この悔しさを晴らす舞台は――今週末、東京競馬場で行われるG1「天皇賞・秋」(芝2000メートル)しかありません。パートナーはもちろん、北島三郎さんのキタサンブラックです。

 春は今年、G1に昇格した「大阪杯」の初代チャンピオンホースとして、その名を刻み、2戦目の「天皇賞・春」で5つ目のビッグタイトルをゲット。「宝塚記念」(9着)で、なぜ、あそこまで大きく負けてしまったのか!? その敗因はいまだ謎ですが、5歳を迎えて、さらに成長し続けているキタサンブラックは、ここで終わってしまうような馬ではありません。

●ジャパンカップ、有馬記念へと続くビクトリーロードへ

 9月16日に放牧先から栗東に帰厩。18日にCWコースで追い切ったキタサンブラックは順調そのもの。ここから、「ジャパンカップ」「有馬記念」へと続くビクトリーロードへ向け、人馬ともに態勢は整いました。

――もう一度、この馬の強いところを見せたい。それは想いではなく、絶対に勝たなければいけないという使命感です。捲土重来――。この秋は僕にとっても、キタサンブラックにとっても、悔しさを晴らす絶好の機会です。そのためにも、まずは目の前に迫った「天皇賞・秋」に全力投球です。

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